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それは「日本アニメは米国で人気が高まっているのか、それともなくなっているのか?」である。
少なくとも商業市場で見る限りここ3年間でアニメDVDなど関連商品市場は急激に縮小している。実際に多くのアニメ関連企業がその影響を受け、経営改革を迫られている。これだけ考えれば日本アニメの市場は明らかに後退しつつある。
ところが同じ期間の米国で、日本アニメはカートゥーンネットワークなどを中心に高視聴率を維持し続けている。さらに、今回のアニメエキスポ(AX)を代表とするアニメコンベンションはその数と参加人数を急激に増やし続けている。
一体、米国では何が起きているのか?アニメは人気があるのかないのか?このふたつの現象を合理的に説明出来る方法はあるのだろうか?
答えは今回のAX2006にある。このAX2006を見る限り、日本アニメは10年前は勿論、5年前、3年前に較べてより広い一般層に到達している。つまり、日本アニメはここ2、3年でさらにその人気を拡大している。
そう判断する理由は、参加者の人種構成にある。日本アニメのマーケティングを考える時に、人種ごとのマーケットは非常に重要な問題である。にもかかわらず、人種別にマーケットを考えることは少ない。これは非常にデリケートな問題だからである。
ところが実際には、少なくとも2000年を過ぎた頃までは、米国の日本アニメ市場の多くはアジア系米国人によって支えられていた。アジア系米国人は、国全体では少数派であるが、アニメファンに間では圧倒的な多数派であった。
それに次ぐ勢力がヨーロッパ系米国人であったのもまた確かである。アニメ文化は隙間市場とされてきたが、その最大の理由は特定の人種に市場のかなりの部分を依存していたことにも理由がある。
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同様のことは人口占有率に較べて明らかに参加者の少なかったヒスパニック系米国人やアラブ系米国人にも言える。つまり、AXの参加者の増加は、これまでアニメに関心を示さなかった人種の増加という側面があるのだ。
2001年から2004年まで米国のアニメとアニメコンベンション拡大の牽引力は女性の市場参加であったとされる。それまで参加者の8割から9割が男性とされたAXでは、現在ではその参加比率を5:5としている。
同様に現在の参加者の増加は、特定人種に依存する隙間市場から一般市場への展開と言える。つまり、市場を構成する人種の広がりという面で、アニメはより一般化しつつある。
AX2006はアニメがこれまでの枠を打ち破り、あらたな段階に入りつつある兆しが表れている場所なのである。そして、アニメ市場の不振は、人気とはまた別の要因で説明することが必要だといえるだろう。
/アニメエキスポ2006