アニメーション制作の資金調達情報2006:報告
アニメの資金調達のシンポジウムは、東京国際アニメフェアでもお馴染みのパネルである。資金調達関連のパネルは当初こそ違和感があったが、コンテンツファイナンスやコンテンツファンドが普及するに連れて、今では珍しいものではなくなっている。
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しかし、今回のシンポジウムでは、今までとは異なった視点もあった。コンテンツ関連のファイナンスというとこれまで、コンテンツ信託に代表されるような作品に対するファイナンスが中心に取り上げられてきたが、今回は会社自体に対するコーポレートファイナンスも話題になったからである。
その例として、パネラーの井本満氏の会社ノーススターズピクチャーズと森祐治氏のシンクが挙げられた。つまり、ノーススターズピクチャーズが、主に自己資金によって設立され会社であるのに対して、シンクはベンチャーキャピタルなどの外部の資金を導入している違いである。コンテンツ関連企業の設立にも、様々なタイプがあるというわけである。
同じような視点から、カリフォルニア州弁護士のミドリ・モール氏はドリームワークス・アニメーションとピクサーというアメリカの2大アニメーション会社のコーポレートファイナンスを紹介した。
ドリームワークスが外部の投資家の資金を調達しているのに対して、ピクサーはディズニーとの協業で一種の製作委員会のようなものを作っているという。モール氏は、製作委員会について、アメリカ側からみると不思議に思えた組織だが、日本側からみると優れた点も多いと述べた。
そのうえで、製作員会はこれからも資金調達手段として残って行くのではないかとした。
逆に、製作員会の欠点として著作権保有者がばらばらなことが森氏から指摘された。森氏は個々の権利を捨てて権利の一元化が必要でないかと考えている。しかし、もともと経済産業省によるコンテンツファイナンスの育成は、作品の権利を持たない制作者が権利を持つことで利益を獲得出来るようにするという考え方が出発点にあった。
もし、ハリウッド式の権利関係一切買取りによる制作であれば、当初の趣旨とは離れて行くように感じる。今回説明のあったLLPの利用した利益の傾斜配分が、その解決手段とも思えるが、この権利の集中と利益の分配の仕組みについてうまく説明されていなかったように感じる。
司会の亀田氏は、今は使い勝手の良い製作委員会だが、金融商品取引法の改正により今後は、製作委員会の登記義務が発生することを指摘した。これにより製作委員会の質が大きく変わる可能性やLLPが急増する可能性があり、アニメの資金調達も今後、1年間で今までに以上に変わるのではないかと話を締めくくった。
アニメーション制作の資金調達情報2006
パネリスト
井本満 /(株)ノース・スターズ・ピクチャーズ代表取締役社長
森祐治 /(株)シンク 代表取締役 CEO
ミドリ・モール 外国法事事務弁護士カリフォルニア州弁護士
司会
亀田卓 ㈱電通 エンタテインメント事業局業務管理部 スーパーバイザー
主催:東京国際アニメフェア実行委員会
/東京国際アニメフェア
《animeanime》