「呪術廻戦」家入硝子役・遠藤 綾の演技論「間違えるなら元気に間違えよう」 | アニメ!アニメ!

「呪術廻戦」家入硝子役・遠藤 綾の演技論「間違えるなら元気に間違えよう」

TVアニメ『呪術廻戦』第2期「懐玉・玉折」より、家入硝子役・遠藤 綾のインタビューをお届け。

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(C)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
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TVアニメ『呪術廻戦』第2期「懐玉・玉折」が、7月6日からいよいよ放送開始。興行収入138億円の大ヒットを記録した映画『劇場版 呪術廻戦 0』につながる過去の話が展開し、五条 悟・夏油 傑・家入硝子の高専時代に起きた事件が描かれる。

最強のコンビだった五条と夏油が、なぜ袂を分かつことになったのか。別れゆくふたりを、家入はどう見ていたのか……。硝子役の遠藤 綾が、『呪術廻戦』の魅力からアフレコの舞台裏、自身の演技論に至るまで語ってくれた。

[取材・文:SYO]



「若さ」をどう表現していくか


――多くのファンにとって、待ちに待った2期です。遠藤さんは、アニメ『呪術廻戦』がここまでの人気を獲得し続けている理由をどのように分析されていますか?

遠藤:ヒットの仕組みは私にはわからないのですが、原作のスピード感やノリ、描かれ方が惜しみなくアニメ化されたところかなと思います。テレビシリーズはもちろん劇場版も見ごたえに加えて、呼吸をするのも勿体ないほどの圧が画面から感じられました。アニメーターさんや演出さん、全てのスタッフの力が結集した作品だと思います。

――いま遠藤さんがおっしゃったスピード感やカメラワーク等々、バトルシーンの外連味が凄まじいですよね。

遠藤:私たち役者は「こういう役は初めて」「こういうセリフを初めて言う」ということがたくさんあるのですが、『呪術廻戦』のアニメーターさんたちも「こういう絵を初めて描く」があったんじゃないかなと思うくらい、観たことのない絵が連続しますよね。観ていただいている方はきっと、作品の印象だけじゃなく「どういう作り方をしているんだろう? アニメーションって凄いな」と制作の裏側にも興味がわくんじゃないかなと思います。

そういった強みがあるから、「もう一度あのスピード感を体験したい」「細部まで観たい」と劇場に何度も足を運んで下さったり、テレビシリーズを観返してくれたりする方が多いのではないでしょうか。謎めいていて魅力的なキャラクターもたくさんいますし、『呪術廻戦』って興味に終わりがないんです。

――『呪術廻戦』の現場独特の雰囲気などもあったりするのでしょうか。

遠藤:1期のときはコロナ禍でもあり分散収録で他のメンバーにあまり会えなかったのですが、ロビーですれ違ったりしても「味付けの濃い」役者さんが多いようには感じます。『呪術廻戦』のキャラクターは一筋縄ではいかない人たちばかりですから、声を当てている人たちも自然と濃くなるといいますか(笑)。

――見てみたいです(笑)。ちなみに過去の話である「懐玉・玉折」アフレコ時には、試行錯誤があったと伺いました。

遠藤:「若さ」をどう表現していくか、最初に色々なパターンを試してディレクションいただきながら作っていきました。最初は中村悠一さん(五条 悟役)が血の気の多い感じで若くしている印象だったこともあり、私も結構若くいくぞ!と思っていたのですが、「もうちょっと気だるさを残しましょう」と軌道修正いただいて「そうか、高専生だからと“若返る”を意識しすぎなくていいんだ」とわかってからはすんなりいけました。気だるさが乗ってくると、自ずと大人の硝子に近づいていきました。

――「懐玉・玉折」を経て現代パートの「渋谷事変」に戻ってきた際、硝子の演じ方自体は変化されたのでしょうか。

遠藤:大きく音声には入っていないかもしれませんが、自分の気持ち的には結構変わったように思います。硝子は高専時代からあまり動じない印象が強いので、演じる自分も「懐玉・玉折」を経験したからといってあまり変えたくはないなと思っているのですが、「懐玉・玉折」の収録をしたときに改めて『劇場版 呪術廻戦 0』のことを思い出しました。

――時系列的には、「懐玉・玉折」と1期の間のエピソードですね。

遠藤:はい。その中で、夏油を討伐する作戦会議をしているときに硝子が一人で立って出ていくシーンがあります。声を当ててはいないのですが印象に残っていたシーンで、「懐玉・玉折」を経て「それは席を立つよな……」と思っちゃいました。

――元・同級生ですもんね。個人的には、1期の硝子が虎杖に接する際の気遣いなど、「懐玉・玉折」を観てからもう一度観返すと切なさが増すように感じます。より観方に奥行きが出るというか。

遠藤:わかります。硝子は五条・夏油との途中で終わってしまった青春を経験しているから、次世代に向けて「今を謳歌してね。誰一人欠けることなく」という気持ちを持っているんでしょうね。いま録ったら、また違う色になるのかもしれません。





間違えるなら元気に間違えよう


――遠藤さんの芝居の方法論として、「準備して持っていく」「その場で作っていく」のバランスはどのような配分なのでしょう。

遠藤:基本的には、準備して持っていきます。軌道修正があればもちろん対応するのですが、私自身が固めていない状態でテストができないタイプです。フラットな状態でテストに臨み、ディレクションを受けて本番に臨める方もたくさんいるかと思いますが、私は最初に「自分はこう考えました」とある程度作り込んだものを提案しないと不安に感じてしまって。

――準備の際にルーティンにされていることはありますか?

遠藤:オリジナルのものであれば、いただいているキャラクターの設定資料やイラストをじっくり見て、自分が演じるキャラクターの立ち位置を頭に叩き込みます。原作があれば、キャラの表情を参考にして作っていきます。『呪術廻戦』は原作通りの形でアニメ化がなされているのですごく想像しやすいですし、原作だと何コマかで終わっているところがアニメだとちょっと多め・長めに膨らまされていることもあるので、コマとコマ、セリフとセリフの間にこういう想いがあるんだということを自分なりに考えたうえで現場に行きます。

――そうした綿密な準備を経ているからこそ、現場で「もっと気だるく」となったときに即対応ができるのですね。素人考えだと、「“気だるく”と言われてもセリフの秒数は決まっているからどうしよう」となってしまいそうです。

遠藤:年月をかけてできるようになったというか、アフレコ現場で変な緊張をしなくなったのかもしれません。新人の頃はプランも少ないし引き出しもないし、言われたことに対して「さっき言われたことは捨てるってことかな、それともプラスしてということかな」とあたふたしてしまって、でも聞けなくて……ということもありました。でも今は他のキャストの方も知り合いが増えてきたので「とりあえずやってみよう。心配しても始まらない」という気持ちが出てきて、やりやすくなりました。

――諸先輩方からアドバイスを受けることもありましたか?

遠藤:はい。自分から先輩に聞きに行ったり、「こういう風にやっているよ」や「自分が新人の頃はこうだったよ」とアドバイスいただいたりすることはあったのですが、ただやっぱり実力が伴っていなくて同じようにはなかなかできなくて。そんななかで「間違えるなら元気に間違えよう」という性格が出来上がっていきました。

――素敵な考え方ですね。思い切りの良さというか。

遠藤:慎重になりすぎてしまうと、動きが重くなってしまいますから。『呪術廻戦』は説明ゼリフも多いですし、言葉も難しくてキャラクターの名前もスッとは読めないものも多いですが、演じる側としては説得力を出さないといけません。そこで、恥ずかしがらずにまず漢字の読み方を聞くところから始めました(笑)。

――硝子は天才肌で医師免許を異例のスピードで獲得し、反転術式も使える数少ない逸材ですが、オープンにされている情報が少ないぶん説得力を持たせるのはなかなか難しいでしょうね。

遠藤:ずっと謎めいているんですよね。それが魅力的なのですが。ただ「大人になってクマができた」という設定もあるので、気苦労は絶えないんだろうな……とも思います。

――最後に、遠藤さんの2期の推しポイントやシーンなどがあれば教えて下さい。

遠藤:硝子・五条・夏油といった大人たちの高専服姿でしょうか。クールなあの人たちにこういう青春時代があったんだということもそうですが、私自身が夏油の高専服姿がすごく好きで……ずっと着ていてほしかったです(笑)。

あとは、夜蛾に怒られた後に、硝子が五条のサングラスで遊んでいるところ。2人の仲の良さがわかる、微笑ましいシーンです。硝子がサングラスを返すところは描いてあるのですが「いつ取ったんだろう?」と想像も膨らみますし(笑)。

――その前にある「先生!! 犯人捜しはやめませんか!?」と言う五条をこっそり硝子と夏油が指さすシーン含めて、トリオ感が絶妙ですよね。

遠藤:良い関係性ですよね。だからこそその後の展開が切なくもありますし、大事なシーンだと思います。



TVアニメ『呪術廻戦』第2期
MBS・TBS系列全国28局:2023年7月6日(木)より毎週木曜日23:56~

■スタッフ
原作:『呪術廻戦』芥見下々
監督:御所園翔太
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:平松禎史・小磯沙矢香
副監督:愛敬亮太
美術監督:東 潤一
色彩設計:松島英子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:石川大輔(モンスターズエッグ)  
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳 圭介
音楽:照井順政
音響監督:えびなやすのり
音響制作:dugout
制作:MAPPA

■キャスト
五条悟:中村悠一
夏油傑:櫻井孝宏
家入硝子:遠藤綾
天内理子:永瀬アンナ 
伏黒甚爾:子安武人

(C)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会

《SYO》

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