堀江貴文×石川光久「攻殻機動隊を巡るトークセッション」 前編 2ページ目 | アニメ!アニメ!

堀江貴文×石川光久「攻殻機動隊を巡るトークセッション」 前編

『攻殻機動隊ARISE border:3 Ghost Tears』が6月28日から劇場上映をスタートする。これを記念して、ITや社会、ビジネスなど詳しい堀江貴文氏と『攻殻機動隊ARISE』を制作するProduction I.Gの石川光久社長のトークが行われた。この内容をご紹介する。

インタビュー ビジネス
注目記事
堀江貴文×石川光久「攻殻機動隊を巡るトークセッション」 前編
堀江貴文×石川光久「攻殻機動隊を巡るトークセッション」 前編 全 3 枚 拡大写真
■ 未来を想像すること

―石川
堀江さんに伺いたかったのは、今、いろいろな企業が成長して、国境を越えて世界を動かしていますが、そんな中で国家は今後どうなっていくと思いますか?

―堀江
国民国家自体は共同幻想なので自分が日本国民であるということは「自分を構成するレイヤー(所属する対象)の1つにすぎない」って考えていますね。以前は「国」「会社」「家族」ぐらいしかレイヤーはありませんでしたが、今は実にさまざまなレイヤーに所属することができます。
例えばFacebookなどではいろんなグループに所属できます。国家単位でいうと僕なんかは「日本国」より「Apple国」の住民のような気すらしています。
iPhoneアプリは販売するとAppleに30%取られます。それを揶揄して「Apple税が高え!」ってみんなが言っています。文字通り僕たちは「Apple国」に税金を払うApple国民で、その国は日本より大きい国かも知れない。「お前Apple国の資格を剥奪するぞ」って言われたら、僕はめちゃくちゃ焦りますね。

―石川
『攻殻機動隊』は「電脳化」することでさまざまな「国を超えたネットワーク(=レイヤー)」に人々が属している世界ですね。

―堀江
「ビットコイン」というネットワーク上の暗号通貨もそうですよね。分散型P2P(※)を使ってみんながお互いの取引を監視して信頼し合うことでお互いのウォレット(所持金額)を認め合うネットワークです。国や第三者機関が入らないので取引コストはほぼゼロ。そのうち契約関係(株や証券)や投票などもこのネットワークを介してできるようになると思います。
(※P2P=多数の端末間を直接通信で繋ぎデータの送受信をする通信方式)

fd

―AA
『攻殻機動隊』が士郎正宗さんによって生み出されたのが1989年、今から25年前のことです。インターネットも発達していなかった時代に現在のネットワーク社会、そしてその先をリアリティをもって予見したものとなりました。実は今から15年後の2029年に『攻殻機動隊』の世界では公安9課が設立されます。では、この2029年に世界はどう変わっていると思いますか。

―石川
士郎さんは『攻殻機動隊』にリアリティをもたらそうとしています。『攻殻機動隊』は核戦争が勃発してしまった世界からスタートしています。放射能汚染が広がる中で日本は放射能除去の技術を生み出し発達させ、その技術を礎に再び高度成長を果たした世界です。潤沢な資金がサイボーグ開発といった科学技術を向上させ、やがて国家規模ではない、国を超えた規模の凶悪犯罪が多発し始める。それに対処する組織として公安9課が設立された。
こういった歴史を作り出して、士郎さんは次のように言っているんですね。「人間というのは振り子と同じだ」と。技術というのは一定の高みまで到達すると必ず揺り戻しがある。服装やインフラなども突飛なデザインに進化していくわけではなくて、ある地点でアナログ方向に回帰していくだろうっていうことですね。
もちろんインフラに限ったことではなくあらゆるものは極端に突き抜けた進化をしない、士郎さんが描く世界はそういった振り子の原理を内包したものになっているんです。質問に戻ると、それが現代から離れ過ぎることなくリアリティに繋がっています。実に巧妙だと思います。

―堀江
なるほど。

―AA
堀江さんは15年後、2029年にこの社会がどう変わっていると予想されますか?

―堀江
全く予想できないですね(笑)。

―AA
堀江さん自身は何をやっていると思われますか。

―堀江
僕は15年後に何をやってようかというのにあんまり興味がないんです。

―AA
堀江さんは、未来に対してポジティブだなとも感じるのですが。

―堀江
未来を考えることは全然ポジティブじゃないと思いますよ。未来にいいことなんかたぶんないんですよ。
「未来を考えてもいいことはない」ということです。15年後って55才ですよ。あんまり考えたくないですよ(笑)。
今より確実に老化している、そんな自分を想像したくない。だから未来を考える人の気が知れないというか。著書『ゼロ』でも書いたんです、「過去にとらわれず未来に怯えず、今を生きよう」って。未来ってやっぱり考えていいことはないんですよ。今やるべき事を一生懸命やった方がいい。

―AA
石川社長はいかがですか?

―石川
いや、僕がまさに今55才なんでそう言われると(笑)。55才も意外に悪くないですよ。

―堀江
もちろんなってみたらそうだと思います(笑)。

―石川
「今やるべき事を一生懸命やった方がいい」というのは思いますね。今を楽しんで生きている人はたぶん10年後も同じように楽しんでいるんじゃないかなと思います。作品も同じです。我々は過去の作品にはほとんど目を向けていません。今にこそ興味がある。
『攻殻機動隊』はシリーズごとに「今」作れるスタッフがそれぞれ集まっている、そこは非常に重要ですね。だからこそ『攻殻機動隊』というのは「『今』作るべき作品」であり続けるんだと思うんです。

後編に続く 

fd


  1. «
  2. 1
  3. 2

《animeanime》

特集

この記事の写真

/
【注目の記事】[PR]