もうぬるオタとは言わせない!年末年始に観たい「隠れた名作アニメ」8選 | アニメ!アニメ!

もうぬるオタとは言わせない!年末年始に観たい「隠れた名作アニメ」8選

2019年は、劇場アニメの本数が飛躍的に増加し、NHK朝の連続TV小説『なつぞら』でアニメーターが主人公となり、黎明期のアニメ業界が取り上げられるなど、アニメの裾野が広がった1年でした。

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2019年は、劇場アニメの本数が飛躍的に増加し、NHK朝の連続TV小説『なつぞら』でアニメーターが主人公となり、黎明期のアニメ業界が取り上げられるなど、アニメの裾野が広がった1年でした。

年々、裾野を広げてきたアニメですが、毎年数多くの作品が生まれ、アニメオタクを楽しませてきたのですが、中には埋もれてしまった「知る人ぞ知る傑作」もたくさんあります。

そんな埋もれてしまった傑作も、日本の豊かなアニメ文化を作り上げた大切な礎です。この記事では、「そんな隠れた名作」を厳選して8本紹介してみたいと思います。誰もが知っている作品ではないから、価値がある作品もあります。こうした作品を履修して、年末年始に一歩先行くオタクを目指してみるのはいかがでしょうか?


【MUNTOシリーズ】京アニ初のオリジナル企画にして初劇場アニメ


【MUNTOシリーズ】『天上人とアクト人最後の戦い』(C)京都アニメーション
【MUNTOシリーズ】『天上人とアクト人最後の戦い』(C)京都アニメーション
2000年代に、『AIR』や『CLANNAD』、『涼宮ハルヒの憂鬱』などゲームや小説を丁寧にアニメ化し、一世風靡した京都アニメーションが初めて自社で企画・制作・販売を手掛けたオリジナル企画。

同社初のオリジナル企画というだけでなく、初の劇場アニメもこのシリーズから誕生しました。天上世界を見る能力を持つ女子高生ユメミと、天上世界を救おうとするムントとの出会いを通じて、地上と天上2つの世界の存亡をかけた戦いが描かれます。

監督を務めたのは京都アニメーションの魂と言える存在の故・木上益治氏。現在では自社レーベルのKAエスマ文庫の作品を中心にオリジナル企画をたくさん制作している同社がオリジナルへの道を歩んだ第一歩であり、映画進出も果たした貴重なシリーズです。


【青の6号】デジタルアニメの先駆的作品


『青の6号』(C)1998小澤さとる/バンダイビジュアル・EMI Music Japan Inc.
『青の6号』(C)1998小澤さとる/バンダイビジュアル・EMI Music Japan Inc.
今やフルCGのアニメは珍しくないですが、その先駆けとも言える作品が『青の6号』です。発表当時「世界初のフルデジタルOVA」と宣伝されていましたが、キャラクターは手描きによるもので、エアブラシなどのデジタルツールを駆使してデジタルの背景やエフェクトとなじませるなどの工夫を凝らしています。

退廃的でクールな世界観で、海を守る国家組織「青」のメンバーとミュータントのゾーンダイク軍との戦いを描いています。
監督は『マッドマックス 怒りのデスロード』にも参加した前田真宏、キャラクターデザインは村田蓮爾、原画に金田伊功、鶴巻和哉、磯光雄、メカニカルデザインに河森正治、山下いくとなど、錚々たるメンバーがスタッフに名を連ねています。

【コゼットの肖像】『まどマギ』新房昭之監督の原点


『コゼットの肖像』(C)2003 COSSETTE HOUSE/アニプレックス
『コゼットの肖像』(C)2003 COSSETTE HOUSE/アニプレックス
『魔法少女まどか☆マギカ』や『物語シリーズ』のケレン味ある演出で知られる新房昭之監督のオリジナルOVAで、『まどマギ』の原点とも言える作品。
新房監督の出世作『魔法少女リリカルなのは』と同じ年に発表された、ゴリゴリに作家性がむき出しになった本格ゴシック・ホラーです。

骨董品店に務める青年が美しいグラスの中に閉じ込められた金髪の少女に恋をすることから起こる、ミステリアスな体験を幻想的に描いています。
独特のインサートカットや、構図など新房監督のセンスがすでにここで発揮されており、また、美術の一部に『まどマギ』との共通性を見出すこともできる作品です。

さらに音楽の梶浦由記との初タッグ作品でもあります。また人気声優、井上麻里奈のデビュー作でもあり、エンディング曲で見事な歌唱力を披露しています。そのエンディングの西洋絵画の一枚絵が大変美しく、見惚れること間違いなしです。

【serial experiments lain】今なおファンを魅了するカルトSF


Anique『serial experiments lain』キャンペーン
『serial experiments lain』(C)NBCUniversal Entertainment

いささか矛盾をはらんだ言い回しですが、「隠れた名作アニメ」というカテゴリの中における超有名作品という位置づけでしょうか。
TV放送から20年以上経た現在でもクラブイベントが開催されたり、ファンの間で考察がなされるなど、根強い人気を誇る作品です。

リアルワールドと「ワイアード」と呼ばれるネットワーク上の世界で生きる少女を通して、人間の実存を問いかけ、ネット社会を予見したような内容で、今見ても示唆に富む内容です。
『エヴァンゲリオン』のヒットで90年代後半に深夜アニメの数が激増し、数々の個性的な作品が誕生しましたが、本作はその頃作られたアニメの中でも群を抜く異色作として名を残しました。

【KEY THE METAL IDOL】自分をロボットと思い込む少女がアイドル目指す。OVA時代の異色作


『KEY THE METAL IDOL』 LIMITED BOX【初回限定生産】18000円(本体)+税 発売元;ポニーキャニオン (C)佐藤博暉/プロダクションKEY
『KEY THE METAL IDOL』 LIMITED BOX【初回限定生産】18000円(本体)+税 発売元;ポニーキャニオン (C)佐藤博暉/プロダクションKEY
1994年に第一巻が発表された、全15巻のOVA作品。自分をロボットだと思いこむ無表情な少女「キィ」が人間になるために、3万人の友達を作れば人間になれるという祖父の遺言を信じて、アイドルを目指すという物語です。
上京したキィの周囲には不可解な事件が多発し、その裏には軍事産業の陰謀が絡んでいたりと多面的な展開を見せる作品です。

オープニング映像が『攻殻機動隊』を連想させますが、『GHOST IN THE SHELL』より1年早く発表されており、主人公キィの無機質なキャラクターは綾波レイを想起させますが、やはり『エヴァンゲリオン』よりも先に発表されていたりと、時代を先取りしたとも言える作品です。1話25分ですが、最終2話は各95分で怒涛の展開を見せます。

【茄子 アンダルシアの夏】日本アニメ初のカンヌ出品作で高坂希太郎監督デビュー作


『茄子 アンダルシアの夏』 Blu-ray Disc 4800円+税 販売元:Vap (C)2003「茄子 アンダルシアの夏」製作委員会
『茄子 アンダルシアの夏』 Blu-ray Disc 4800円+税 販売元:Vap (C)2003「茄子 アンダルシアの夏」製作委員会

2018年のダークホース的話題作『若おかみは小学生!』の監督を務めた高坂希太郎監督の監督デビュー作。
スタジオジブリで作画監督を務めた高坂監督が自転車愛を爆発させている作品で、上映時間47分と短いながらも見事な作画と的確な脚本運びで、酸いも甘いも噛み分けた大人の人間ドラマを作り上げています。
日本のアニメ作品として初めてカンヌ国際映画祭の監督週間に出品された作品でもあります。

スペインの自転車レースに出場する主人公と、同じ時間に結婚式を挙げるかつての恋人と兄のエピソードが交錯し、複雑な想いを抱えながらプロのレーサーとしてチャンピオン目指して走り抜く物語です。
続編『茄子 スーツケースの渡り鳥』がOVAで作られておりこちらもオススメです。

【アリーテ姫】片渕須直監督の長編映画第一作


『アリーテ姫』(C)ARETE PROJECT
『アリーテ姫』(C)ARETE PROJECT
『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が公開中の片渕須直監督の長編映画デビュー作。同作にも通じるような、1人の女性の自分を見つけていく様や想像力の大切さ、市井の生活を丁寧に描写するなど片渕監督の作家性の片鱗がすでに現れています。

塔の中に囚われたアリーテ姫は、彼女を嫁にしようと言葉巧みに重臣たちをそそのかす魔法使いに連れ去られ幽閉されてしまうのですが、それでも希望を失わず生きる姿に感動させられます。
『この世界の片隅に』同様、人生への深い洞察が感じられる作品で、監督の一貫した人間への温かい眼差しを感じ取れる作品です。

【天使のたまご】押井守監督のオリジナル作品にして最難解映画


『天使のたまご』(C)押井守・天野喜孝事務所・徳間書店・徳間ジャパン
『天使のたまご』(C)押井守・天野喜孝事務所・徳間書店・徳間ジャパン
『GHOST IN THE SHELL』や『パトレイバー』シリーズなどで知られる日本アニメ界の重鎮、押井守監督の初のオリジナル企画であり、深遠な作風で知られる同監督の中でも最も前衛的で難解な作品です。

水没した廃墟で巨大なたまごを天使のものだと信じている少女が、夢で見た鳥を探す少年と出会うという内容ですが、物語よりも暗喩にみちた数々の美しいモチーフによって語る作品。髪の毛1本ごとに動きをつけた緻密な作画、小林七郎による冷たくも美しい背景など、芸術的完成度が極めて高く、熱狂的な支持者も数多い作品です。
難解かつ、販売成績も振るわなかったため、この後仕事のオファーが途絶えたなどいろいろな意味で押井監督の転機となった作品です。

これらの埋もれた名作を観ると、日本のアニメの多彩さと深さを実感できると思います。この年末年始に是非挑戦して、2020年一段ディープなアニメライフを楽しんでください。

《杉本穂高》

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