「技術は見て盗め」はもう難しい―エイトビットが実践する、アニメーターが成長し続けられる組織づくり【インタビュー】 | アニメ!アニメ!

「技術は見て盗め」はもう難しい―エイトビットが実践する、アニメーターが成長し続けられる組織づくり【インタビュー】

アニメサイト連合企画「世界が注目するアニメ制作スタジオが切り開く未来」の第19弾は、エイトビットの社長・葛西励にインタビュー。設立から11年という、まだ若い制作会社の取り組みを聞いた。

インタビュー スタッフ
エイトビット 葛西励氏インタビュー
エイトビット 葛西励氏インタビュー 全 21 枚 拡大写真
アニメサイト連合企画
「世界が注目するアニメ制作スタジオが切り開く未来」

Vol.19 エイトビット

世界からの注目が今まで以上に高まっている日本アニメ。実際に制作しているアニメスタジオに、制作へ懸ける思いやアニメ制作の裏話を含めたインタビューを敢行しました。アニメ情報サイト「アニメ!アニメ!」、Facebook2,000万人登録「Tokyo Otaku Mode」、中国語圏大手の「Bahamut」など、世界中のアニメニュースサイトが連携した大型企画になります。
全インタビューはこちらからご覧ください。


エイトビット代表作:『転生したらスライムだった件』『ヤマノススメ』『IS<インフィニット・ストラトス>』『劇場版 魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女』『Rewrite』『ナイツ&マジック』など。
2019年10月には赤根和樹監督のオリジナルアニメ『星合の空』の放送をひかえている。

『IS<インフィニット・ストラトス>』に代表される3DCGを駆使したSFアクション路線から、『ヤマノススメ』のような“日常系”まで。幅広い作品を手がけるエイトビット。設立から11年という、まだ若い制作会社の取り組みを、社長の葛西励氏に聞いた。
[取材・構成=藤津亮太]

エイトビット 葛西励氏インタビュー今回のインタビューでお邪魔したエイトビットの本社スタジオが入居しているビル

エイトビット 葛西励氏インタビュー見晴らしの良い上層階からの眺め

エイトビット 葛西励氏インタビュースタジオの入り口

エイトビット 葛西励氏インタビュー隣のビルにもスタジオがあり、こちらは天井も高く開放感あふれる空間

エイトビット 葛西励氏インタビュースタッフが黙々と作業を続ける制作現場の風景

エイトビット 葛西励氏インタビュー進行管理のために毎日貼り替えられる納品までのカウントダウンポスター

エイトビット 葛西励氏インタビュースタジオ内の棚には必要な素材が整然と管理されている

エイトビット 葛西励氏インタビュー窓からの眺めも良く、パーテーションのない机で伸び伸びと仕事ができる印象の社内

エイトビット 葛西励氏インタビュー10月放送開始予定の「星合の空」の社内掲示板

■“ものづくりの真髄”に踏み込んだ『IS<インフィニット・ストラトス>』


エイトビット 葛西励氏インタビューエイトビット社長の葛西励氏

――葛西さんは2008年にアニメ制作会社・サテライトから独立してエイトビットを設立しました。

葛西:アニメ業界に入った時に、10年は続けようと思って入ったんです。そして10年目の節目になった時に、新しいチャレンジをしたくなって独立することを決めました。信頼関係があるスタッフとものづくりをしていくなら、独立したほうが、求められる作品をもっと作れるのかな、ということもありました。

――どうしてエイトビットという社名にしたんでしょうか?

葛西:僕がファミコン世代なんですよ。今のゲームもおもしろいですけれど、昔のゲームって、やっぱり、自分にとってすごくおもしろかったなと思っていて。それで、ファミコンのCPUが8ビットだから、「おもしろさの原点」というか、そういう気持ちを込めてつけた感じです。

エイトビット 葛西励氏インタビュー
――現在設立から11年目ですが、やはり2011年に放送された、初の元請け作品『IS<インフィニット・ストラトス>』がヒットしたのは大きかったのではないでしょうか。

葛西:そうですね。独立して実際に会社経営してみると、社員とか、当然守らなくちゃいけないものがいろいろあるんですよ。だから経営は堅くやるべきだと思っていました。
でも『IS<インフィニット・ストラトス>』をやる時はちょっと違っていて。初元請けだし、自分たちの仕事が今まで評価されてきたポイントからすると、この作品はちょっと踏み込んで作らないと意味がないなと考えたんです。

思えばサテライトで河森正治監督と『創聖のアクエリオン』や『マクロスF』でお仕事をご一緒した時に「ここまでやらなくちゃいけない」っていうこだわりとか、ものづくりの真髄みたいなものに触れさせてもらっていたんですよね。
だから、ここは踏み込むところなんだろう、と思い菊地(康仁)監督とがっちりタッグを組んで頑張りました。

『IS<インフィニット・ストラトス>』(C)2011 Izuru Yumizuru, PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION MEDIA FACTORY/Project ISエイトビット初の元請け作品『IS<インフィニット・ストラトス>』(2011年)
(C)2011 Izuru Yumizuru, PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION MEDIA FACTORY/Project IS


――それがヒットにつながったわけですね。

葛西:そうだと思います。ただプロデューサーとしては反省も残りました。

――そうなんですか。

葛西:元請け1本目ということで、作画さんも、演出さんも、3DCGチームもみんなそれぞれの立場で本当に頑張ろうとしてくれていたので、それはとても嬉しかったですし、「ありがとうございます」という感じでした。
ただ自分の中では、作品にとって優先すべきことを、最初の段階で整理して自分から示すことができていたら、もっとその気持ちを叶えてあげられたかもしれないし、もう少しスムーズにできたのかもしれない、と思いました。
今でもなかなかうまくできませんが、良い作品をなるべくスムーズに作りたいです。

■葛西社長から見た河森監督と赤根監督


エイトビット 葛西励氏インタビュー
――河森監督や赤根監督のものづくりの姿勢に影響を受けたというお話がありましたが、葛西さんから見て、お二人はどんな監督なのでしょうか。

葛西:河森さんは、まずアイデアマンで、人を喜ばせるのに貪欲です。だから、いろいろと新しいアイデアを思いつくんです。自分がそのアイデアを実現させるために気を配ったのはスタッフへの伝え方ですね。

せっかく画期的なアイデアでも、作業のタイミングによってはスタッフのモチベーションを下げてしまうかもしれないので、ただ伝えるのではなく、「大変だけど、これをやると、こういういいことがあるはず!どう思われますか?」みたいに一方的にならないように話をして、スタッフが「確かに面白そうだ」「これはやる価値がある」って思って作業してもらえるように努力していました。

――スタッフに動機づけをして、巻き込んでいくわけですね。赤根監督はどんなタイプの監督なのでしょうか。

葛西:赤根監督は、すごくストイックに突き詰めるタイプですね。スケジュールがなくなってきても、諦めずにチャレンジしようとする方です。
でもそれは頑固ということじゃなくて、柔軟性もあると思います。目標を変えるわけではなく、絶対的な目標に到達するためのルートを柔軟に考えていく、という感じです。だから作っている間はとても大変ですが、すごく鋭い作品ができあがるんです。

『星合の空』(C)赤根和樹・エイトビット/星合の空製作委員会(C)赤根和樹・エイトビット/星合の空製作委員会

葛西:『星合の空』は赤根監督の持ち込み企画で、ソフトテニスが題材です。
日本のソフトテニスは中学生の競技人口がすごく多いんですけど、プロ選手はいなかったスポーツなんです。それがある種の青春の象徴をするような、そんなドラマを描く作品になります。赤根監督の作品は、回を追うごとに、世界に引き込まれていく魅力があるので、そこを楽しみに見てもらえればと思います。


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《藤津亮太》

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