【インタビュー】『衛宮ごはん』ヒットの舞台裏に迫る…アニプレックス×AbemaTVキーマンインタビュー | アニメ!アニメ!

【インタビュー】『衛宮ごはん』ヒットの舞台裏に迫る…アニプレックス×AbemaTVキーマンインタビュー

大人気ゲーム『Fate/stay night』のスピンオフであり、「Fate×料理」が織りなす美味しく優しい世界を描いた『衛宮さんちの今日のごはん』。今回はアニプレックス担当者に「動画配信のみ」というチャレンジングなコンテンツ配信について話を伺いました

ニュース アニメ
注目記事
【インタビュー】『衛宮ごはん』ヒットの舞台裏に迫る…アニプレックス×AbemaTVキーマンインタビュー
【インタビュー】『衛宮ごはん』ヒットの舞台裏に迫る…アニプレックス×AbemaTVキーマンインタビュー 全 12 枚 拡大写真
大人気ゲーム『Fate/stay night』のスピンオフであり、「Fate×料理」が織りなす美味しく優しい世界を描いた『衛宮さんちの今日のごはん』。

2017年12月から放映開始となっている本作ですが、アニメ放送は毎週1話放送がスタンダートになっている今、「毎月1話放映」なおかつ地上波放映を行わず「インターネット動画プラットフォームのみの配信」という放映方式を採用し、話題にもなりました。

今回は数ある動画配信プラットフォームの中でも毎月先行配信を行っている「AbemaTV」のアニメ局 局長 椛嶋麻菜美氏を含め、本作の製作を務める株式会社アニプレックス(以下:アニプレックス)の企画制作第2グループ プロジェクト推進部 古橋宗太氏、ライツ事業第2グループ 配信ライセンス部 シニアマネージャー課長 河村晋平氏にインタビューを実施。「動画配信のみ」というチャレンジングなコンテンツ配信について話を伺いました。


――まず、みなさまの自己紹介をお願いします

古橋:『衛宮さんちの今日のごはん』でアソシエイトプロデューサーを務めた古橋です。最近では『Fate /Apocrypha』や『Fate/Extra Last Encore』、アプリゲーム『Fate/Grand Order』のCM制作など、『Fate』シリーズの映像作品の制作に携わっています。入社したときは株式会社ソニー・ミュージックマーケティングで音楽の営業を名古屋でやっていました。その次の年にアニプレックスへ異動し、1年目は宣伝業務を担当していました。


河村:アニプレックスの河村です。もともと洋楽部門に8年ほどいまして、そこで宣伝と制作をやっておりました。その後に株式会社ソニー・ミュージックマーケティングのデジタル部門で音楽の配信を1年半ぐらい担当、その後アニプレックスに異動して8年目になります。アニプレックスでは映像配信の仕事と番組販売の仕事をやっています。今回は『衛宮さんちの今日のごはん』の映像配信の担当をしました。


椛嶋:2007年にサイバーエージェントに新卒で入りまして、関連会社のCyberZやCAテクノロジーの立ち上げに従事しました。SEO事業コンサルや営業、スマートフォン広告・アドテク領域の広報などに携わっていました。8年くらい広告代理事業の方にいましたが、2015年に「AbemaTV」が出来る前に「テレビ朝日と何かやるぞ!」という段階で映像業界に参画しました。現在、アニメチャンネルを担当しています。あと、「CA-Cygamesアニメファンド」にてアニメ作品への出資も担当しています。


――古橋さんと河村さんは「AbemaTV」はもともと使っていたのでしょうか

河村:「AbemaTV」開局前からお話を頂いており、ビジネスもご一緒する流れになっていたので、早いタイミングから使っていました。電車の中でニュースやアニメを見たり、他社動向も見たりしていました。いろいろな使い方をしていますが、プライベートでは何も考えずに見られるようなものを見ています。「AbemaTV」含め、動画配信プラットフォームはほぼすべて利用しています。

――古橋さんはどうでしょう

古橋:『衛宮さんちの今日のごはん』を担当する前は全然利用していませんでした。どう使ったらいいかというか、どのタイミングで見れば良いかもわからなくて。最近は『衛宮さんちの今日のごはん』もあるので、定期的に見つつ、何かしらアニメを見たい時に点けています。特定のものを見たいときというよりは、家のTVに「AbemaTV」を繋いでぼんやりと見ていますね。

――『衛宮さんちの今日のごはん』の配信をウェブ動画配信のみで行ったのはかなりの勝負だと思います。そういった展開を決めた理由をお伺いしたいです

古橋:この企画はufotableの近藤社長から弊社に打診があって、この作品をアニメ化できないかと提案頂いたところからスタートしました。その時にみんなでのんびりと楽しめる息の長い作品にしたいという話を頂いて。30分フルでの配信や毎週配信したりという雰囲気よりも、「のんびりと1年間やろうよ」という形が、作品の性質にも合っているのかなと思いました。となるとテレビではなかなか視聴習慣もつきづらいし、熱量も高くなっていかないのかな、というところから、あえて範囲を狭めてウェブ動画配信という形になりました。

――そういったウェブで動画配信をしたい、という相談が河村さんのところに来るんですね。最初に聞いたときはどうでしたか?

河村:非常に強気だなと。ゲーム・小説・コミックなど多岐にわたって展開しているシリーズならではだなと思いました。

――アニプレックスの他の作品ではそういったことはあるのでしょうか

河村:アニプレックスのタイトルでは1つだけNetflixでテレビ放送がない独占配信がありますが、それだけですね。

古橋:テレビが大きなショーケースになる事は確かなので、どうしても持ち上がる企画はテレビ放送ありきの作品が多いかと思います。

――結構、社内を説得するのが大変そうな感じがします

古橋:そこは問題ありませんでした。『Fate』シリーズのファンはその母数もさることながら、熱量が高く、月1回の配信でも楽しみに待ってくれると思っていたので、これだったら配信でも行けるんじゃないかという確信は企画発足当初からあったと思います。

――他にも動画配信プラットフォームがある中で、何故「AbemaTV」だったのでしょうか

河村:動画配信プラットフォームとして新しい良いイメージが付いていますし、非常に宣伝力もあります。SNSを使った宣伝もものすごく実施して頂けるので、すごい広がりが出るんですね。なので、その要素に魅力があって、これは「AbemaTV」さんがいいんじゃないかなということになりました。

――最初から「AbemaTV」でやるぞというわけではなく、他のプラットフォームも検討したのでしょうか

河村:もちろんです。

――アプローチは「AbemaTV」側からですか

河村:アニプレックスからですね。


――アニプレックスから相談があった時は「成功できる」という想定はあったのでしょうか

椛嶋:原作1巻を読んで「これ最高だな…」と。ufotableさんなら、間違いなく素晴らしいものが出来るじゃないですか。なので絶対に最速でやりたいという気持ちもあったので、相談を頂いた翌日には条件を出していました。

河村:早かったです。

――反響はどうでしたか?

古橋:SNSとの連動性に対して不安はあったのですが、毎月配信するとTwitterでトレンド入りしています。SNSとの連動性もしっかりあるんだなという印象を受けました。「AbemaTV」で見ながらコメントも打てるのですが、「「AbemaTV」を見ながら、Twitterも一緒にやる」というユーザーさんが多かったので、思っていた以上にSNS上での反響が大きかったです。「AbemaTV」でわいわいみんなで見て、その後にTwitterで感想を言うという方も多かったですね。

河村:「AbemaTV」内の年間アニメランキングで3位なのですが、短尺で月1しかやっていない作品が、フル尺でがっつり仕掛けていて作品に混じっているんですよね。そういった点からも、バズが得られたのは嬉しかったですね。今までの『Fate』シリーズのアニメではない、“食事モノ”でこれだけの視聴数が得られたのはかなり画期的だったんじゃないかなと思います。

――『衛宮さんちの今日のごはん』、なのですが…。見てても何も生まれないんですよね

一同:(笑)

――平和がずっと繋がっていて、昔から見ている人はそれとの繋がりも見えて。それでもユーザーがたくさん視聴する、と いうのはどういったシーンが多いのでしょうか

古橋:他の『Fate』アニメシリーズでは派手なアクションを描いて撮影をしっかり入れて硬質な絵を作るというイメージを持つ方が多いと思うのですが、この作品に関してはufotableさんの丁寧な絵作りが最大限発揮されていたと思います。キャラクターの関係性や料理の描写をとにかく大事にする作品なので、ワンシーンワンシーンのキャラクターの所作や、料理描写の丁寧さが、ずっとシリーズを追い掛けてきた方々にも届いたのかなと思います。

――原作にない話もありましたね。オムライスの回(第11話)とか

古橋: ufotableさんから1つ大きな山を後半に作りたいという相談もあって、原作のTAa先生に、オリジナルを1本書いていただけないかとお願いしたら、快諾頂けて実現した企画ですね。TAa先生も「Fate/Zero」が大好きで、「ufotableさんが作ってくれるんですね!!」というテンションだったので、すごく協力して頂けました。

――テレビで放送しなかったから数字が伸びなかったというのはありそうでしょうか

河村:いまのところは見えないですね。Blu-ray・DVDも好調です。

古橋:最初はユーザーさんからも「地上波でやらないの?」という声を頂いたのですが、4話以降からはそういったコメントも少なくなったので、新しい視聴習慣として受け容れて頂けたのかなと思いました。

河村:「AbemaTV」以外の動画配信プラットフォームでも視聴はしっかりと伸びていますし。

――何度でも見てられる内容ですしね

河村:実際、作品中で紹介されたお茶漬けとか作るとうまいんですよ。ちゃんと料理監修も入っているので、僕なんか素人ですけど、作って「おいしいじゃん!」って声を上げたくなっちゃうんですよね。


古橋:実際、視聴者の方もそうやって楽しんでいる方が多かったりするので、みんなで楽しむという空気感ができて、そこの集まる場が「AbemaTV」になったのかなと思います。

――1話を視聴していて、おせち料理の説明で「マメに働けるように豆が入ってるんだよ」みたいなことを言っていて、そうなんだ…と勉強になりました

一同:そうですね 笑。

――他の作品でもこの座組は実施できそうでしょうか。テストは必要かとは思いますが

河村:合う・合わないはあるかなと思っているので、全部同じでうまくいくとは思いません。作品によりですね。今回も『Fate』関連作という非常に強いブランドがあったので、成功しているというのももちろんあると思うので、そこは冷静に見なければならないと思います。

――インターネット配信は今後増えていきそうでしょうか

古橋:オリジナルを配信限定でやるという流れにはなかなかならないと思います。今回みたいに熱量の高いユーザーが付いているタイトルのスピンオフを配信限定でやる、となれば全然ありえるかなと。

――実際、「AbemaTV」での数字としてはどうなのでしょう

椛嶋: 「AbemaTV」のアニメチャンネルは4月にリニューアルして、地上波先行など最速配信の拡充をしたのですが、新作アニメを視聴するユーザー数がとても伸びています。この半年でオンデマンドの視聴も倍以上に成長しました。新作タイトルの過去話を見逃し配信で見て、最新話をリアルタイムで見るという視聴スタイルが多く、更に数字が伸びています。10代~20代の若い子たちはアクティブに来てくれるなという感じですね。

――全てをウェブ動画配信にするのはまだまだ試行錯誤が必要かとは思います。年末の「Fate/stay night[HF]チャンネル」開設を「AbemaTV」と組もうと思った理由が教えてください。これはどちらから持っていかれたのでしょうか

椛嶋:これは弊社からです。

河村:今まではニコニコ(ドワンゴ)さんと年末の『Fate』関連の特番をやっていましたが、今回ご提案を頂きまして「2社とご一緒したらでやったらどうなるんだ?」ということで組ませていただきました。『Fate/stay night [Heaven's Feel]』の通常版とコメンタリー版を同時に隣のチャンネル同士で流して、フリックしながらコメンタリーを見たい時と本編だけみたい時とで見れる、という施策を頂いてこれは面白いなと。これはすごい新しいですよね。画期的。

椛嶋:「Fate/stay night [Heaven's Feel] × AbemaTV プロジェクト」というのを今年の10月のマチアソビで解禁して、特番やFate関連の編成など長いスパンで展開していて、集大成として、年末年始に「Fate/stay night[HF]チャンネル」というものを形にしました。ポイントは、地上波よりも先行で『Fate/stay night [Heaven's Feel]』が放送されることですね。

――ユーザーさんの反響はどうですか?

椛嶋:反響は今まで一番大きかったです。「地上波よりも早いね」というのは伝わっていて。ファーストウィンドウが「AbemaTV」になったのはユーザー的にもインパクトが大きかったみたいで、『Fate』関連ファン以外の方にも凄みが伝わったみたいです。

河村:ニコニコさんとも共存できたケースですね。

――アニプレックスから見て、アニメの放送であったり配信は、今後どういうふうになっていくと想定していますか


河村:どんどんユーザーの多様化が進んでいるので、どこで視聴するか、どのデバイスでするかというのもあると思います。大晦日に『Fate Project 大晦日TVスペシャル2018』の放送がありますが、例えばリビングは紅白歌合戦を見ていても、僕は違うよと部屋で「Fate/stay night[HF]チャンネル」を見てくれるような人がいるので、こういう盛り上がりが作れると思っています。細分化が進むと思っているので、常にユーザーの動向をウォッチして、それに合わせた形で作品を届けられればなと思っています。

配信の良いところは自由度がテレビより高いので、クリエイターにとって重要度が増すと思います。あとは本編の尺の調整をできるのも画期的でした。そこを調整してくれるのは制作側にとっても非常に大きいです。

――古橋さんはどうですか?

古橋:同じような話になってしまいますが、表現の幅が広がっているなと思います。フォーマットごとに得意なこととか特徴があるので、何かが淘汰されるというよりは、共存していきながら、この作品はこれにはめていこうとか、中には劇場でやって、それをTVで再編成して、さらに配信もかけるみたいなことをやっている作品もあるので、そうやってうまくそれぞれの特徴を活かしながらこの先は進んで行くのかなとは思っています。


――「AbemaTV」としてはどうでしょう

椛嶋:配信だけでというのは考えていません。お互いに補い合って、アニメの市場が「AbemaTVが参入して大きくなったよね」って言ってもらえると良いと思っています。面白いアニメというきっかけがあるだけで、日常のスタイルが変わるじゃないですか。一気見するとか。新しい趣味が増えたぐらいに収穫があったので、それをひとりでも多く体験してもらえればいいなと思っています。ライトなアニメファンを増やしていくというか。

――最後に今後の取り組みについてご紹介ください

椛嶋:最初に情報解禁する時は「AbemaTVで!」と選ばれ続けたいので、こちらもチーム総出で頑張ります。「新しい話題を作る時はAbemaTVさんと一緒にやりたい」と言って頂けるよう努力します。

河村:1月1日に「衛宮さんちの今日のごはん」の最終話がありますので、是非見てほしいです!

古橋:配信の度に毎回Twitterでツイートしてくださったり、ファンのみなさまの存在をより強く感じることができる1年でした。2019年も『Fate」』関連映像作品は続いていきますので是非応援のほど宜しくお願い致します!

――ありがとうございました

河村・古橋・椛嶋:ありがとうございました


「ウェブ動画配信が良い」「テレビ放映が良い」という話ではなく、ユーザーの視聴環境によってデバイスやプラットフォームをうまく活用していくことが必要である、ということを終始全員が熱く語っていました。今後さまざまなテクノロジーやサービスが世の中に溢れていくことが想定されますが「ユーザーファースト」を常に考えながら作品を展開していく両社の今後の動向に注目です。

【衛宮さんちの今日のごはん】


(c)TAa・KADOKAWA・TYPE-MOON / 「衛宮さんちの今日のごはん」製作委員会

◆最終話直前にAbemaTVで振り返り全話一挙SPが決定!
<2019年1月1日(火)>
18:00~ 第一話~第十二話 一挙配信
配信チャンネル:Abemaアニメch
※配信後、Abemaビデオにて48時間無料視聴可能

21:00~ 第十三話(最終話)WEB 最速配信
配信チャンネル:Abemaアニメch
※配信後、Abemaビデオにて1週間無料視聴可能

【AbemaTVアニメch × 劇場版「Fate [HF]」第二章 SPラインナップ】


(c)TYPE-MOON・ufotable・FSNPC

◆大晦日に期間限定で「Fate[HF]ch」を開設し、「Fate/stay night」アニメ化作品を31時間連続配信!
<2018年12月31日(月)>
6:00~『TVアニメ「Fate/stay night [Unlimited Blade Works]」』
全26話一挙配信
配信チャンネル:Fate [HF]ch
※配信後、Abemaビデオにて72時間無料視聴可能

18:30~『劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」 I.presage flower』
ノーカット版・地上波先行
配信チャンネル:Fate [HF]ch
※配信後、Abemaビデオにて24時間無料視聴可能

21:00~『Fate Project 大晦日TVスペシャル2018』
劇場版「Fate [HF]」第一章 地上波同時配信
配信チャンネル:Fate [HF]ch

21:00~『劇場版「Fate [HF]」第一章 オーディオコメンタリー版』
AbemaTV限定・独占配信
配信チャンネル:Abemaアニメ2ch
※配信後、Abemaビデオにて24時間無料視聴可能

24:00~『TVアニメ「Fate/stay night [Unlimited Blade Works]」』
全26話一挙配信
配信チャンネル:Fate [HF]ch
※配信後、Abemaビデオにて72時間無料視聴可能

《森 元行》

特集

この記事の写真

/
【注目の記事】[PR]