『モアナと伝説の海』監督インタビュー 喋らないキャラクターである「海」にかけた想いとは? | アニメ!アニメ!

『モアナと伝説の海』監督インタビュー 喋らないキャラクターである「海」にかけた想いとは?

インタビュー スタッフ

『モアナと伝説の海』監督インタビュー 喋らないキャラクターである「海」にかけた想いとは?
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2017年3月10日公開の映画『モアナと伝説の海』はウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの第56作目となる長編映画。オセアニアの美しい海からインスパイアを得て、愛する人々を守るために大海原へ旅立つ少女・モアナの冒険を描き出している。
本作を手がけたのはベテラン監督のジョン・マスカーとロン・クレメンツだ。二人は『リトル・マーメイド』『アラジン』『トレジャー・プラネット』などの作品で共同監督を務めたが、今回はキャリア初の3DCGアニメーションに挑んだ。インタビューでは、プリンセスでありながらヒーローとしても活躍するモアナや、手描きアニメーションへの想いなどを伺った。
[取材・構成:高橋克則]

『モアナと伝説の海』
http://www.disney.co.jp/movie/moana.html
2017年3月10日(金)公開

■モアナが16才である理由

――アニメ情報サイトの「アニメ!アニメ!」です。主にアニメファンに向けた記事を扱っています。

ジョン・マスカー監督(以下、マスカー)
それじゃ私たちにピッタリなサイトだね。

ロン・クレメンツ監督(以下、クレメンツ)
僕らもアニメーション・ギークだからね(笑)。

――よろしくお願いします。まず『モアナと伝説の海』を観て、画面に映るすべてのものが動いていることに驚きました。どのように世界を作っていったのでしょうか?

マスカー
『モアナ』は手描きアニメーションでは決して生み出せなかった作品です。本編の85パーセントは海が舞台のため、自然を描写するエフェクト・ショットが非常に多くなりました。強い海風によってモアナの髪は揺れ、船の帆はなびき、太平洋は刻々と姿を変えていきます。スクリーン上のあらゆる物体を動かすことができたのは、3DCGでシミュレーションを重ねた成果です。
自然の描き方には宮崎駿監督の影響を受けています。私は宮崎作品の情緒あふれるシーンが好きなんですよ。空にかかった雲がゆっくりと動いていくように、現実世界の感覚を美しく詩的に表現したいと思いました。

――とくに主人公のモアナはアグレッシブに動き回るキャラクターですね。彼女の性格がよく伝わってきます。

クレメンツ
僕たちはこれまでも『リトル・マーメイド』のアリエル、『アラジン』のジャスミン、『プリンセスと魔法のキス』のティアナなど、多くのディズニープリンセスを描いてきました。モアナも同じプリンセスですが、まったく異なる要素も持ち合わせています。たとえば彼女は英雄としての使命を背負っています。故郷の島を救うため大航海にチャレンジしますが、もし途中で旅を諦めてしまったら世界は滅んでしまう……。僕たちは16才の少女に大変な重責を背負わせてしまいましたね(笑)。
でもモアナはとても聡明な子で、臨機応変に状況を打破できる力を備えている。ヒーローになる覚悟や勇敢さを内に秘めたプリンセスであることを、アクションによって表現したかったんです。


――『リトル・マーメイド』のアリエルも16才の少女でした。16才という年齢には何か特別な力が宿っているのでしょうか?

マスカー
16才は子供が大人になるまでの過渡期に当たります。私は一体誰なのか、自分はどのように見られているのか、これから何をするべきなのか……。普通の人間であればアイデンティティについて考え始める時期ですよね。『モアナ』は彼女が大人になっていく姿を描いた成長の物語です。人生の岐路に立っているという点において、世界を救い出すモアナの使命は、大人にならなければいけない16才の年齢と重なっているんですよ。

クレメンツ
まぁ60才を過ぎても大人になりきれていない僕みたいな人間もいるけどね(笑)。

――日本では14才、中学二年生になると色々なことで悩み出すと言われています。

マスカー
実はモアナも当初は14才だったんです。でも14才では両親から航海の許可はもらえないだろうと考えて、製作総指揮のジョン・ラセターと話し合ったうえで変更しました。ストーリーに説得力を持たせるという意味でも、16才が相応しかったですね。

■アニメーションはセリフがなくても感情が伝わる

――モアナが旅の途中で出会うマウイは、アニメーションらしいダイナミックな動きに目を惹かれました。

マスカー
マウイは風と海をつかさどる半神半人のキャラクターです。島を持ち上げてしまうほどの怪力ですから、大げさで誇張された表現が最適です。物理法則に問われない自由な動きによって彼の力強さを表わしました。

――『モアナ』は3DCGアニメーションですが、マウイの体に彫られたタトゥーのミニ・マウイは手描きアニメーションの手法を用いていることも印象的でした。

マスカー
タトゥーについては手描きアニメーションの魅力を思う存分見せつけたかったんです。ミニ・マウイは『アラジン』のランプの精・ジーニーを手がけたアニメーターのエリック・ゴールドバーグが担当しました。CGで表現されたマウイの胸を手描きのミニ・マウイが動き回るシーンは、観客の心に残る場面になったと思っています。


――ミニ・マウイをはじめ、本作にはセリフを発しないキャラクターがよく登場します。それはなぜでしょうか?

クレメンツ
たしかに『モアナ』は僕たちが作ってきた映画の中で、喋らないキャラクターが一番多い作品かも知れないですね。子豚のプアや雄鳥のヘイヘイ、ココナッツの海賊であるカカモラも、鳴き声や音は出すけれど人間の言葉は話さない。最も重要なキャラクターである「海」にもセリフは一切存在しません。「海」は『アラジン』の魔法の絨毯と同じように、言葉も表情もないパントマイムのキャラクターです。でもアニメーションは言葉がなくても気持ちや感情を伝えることができるんです。

マスカー
初期案ではキャラクターがもっと喋るはずでしたが、次第にセリフが減っていったんです。カカモラの場合は数を大量に増やして脅威を出せたので、最終的には言葉が不要になりました。

クレメンツ
アニメーションは動きだけで楽しさを伝えられる表現です。僕たちが子供の頃から親しんできた『白雪姫』のおとぼけ(ドーピー)や『ダンボ』もセリフを喋らないですよね。でも言葉に頼らないからこそ、観客は作品世界により入り込むことができます。すべてを動きだけで表現しなければならないので、アニメーターにとっては大変な作業になりますが、それがアニメーションの持つ特別な力だと信じています。だから僕たちはパントマイムのキャラクターを作品に必ず入れるようにしています。

マスカー
そこは我々を育ててくれた手描きアニメーションの要素が強く出ている部分ですね。ディズニーやワーナー・ブラザーズなど数多くの制作会社が生み出したカートゥーン、そして様々な国で作られたアニメーションが私たちは大好きなんですよ。『モアナ』はその気持ちが強く出た作品になっています。

『モアナと伝説の海』
2017年3月10日(金)より全国ロードショー
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

(C)2016 Disney. All Rights Reserved.

《高橋克則》

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