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あにめたまご2017「げんばのじょう~玄蕃之丞~」堂山監督と古久保Pに訊く "若手アニメーターのためにあえてハードルを上げた"

「あにめたまご2017」より日本アニメーションが出品する『げんばのじょう-玄蕃之丞-』について、作品を手掛けた堂山卓見監督と古久保悠プロデューサーにインタビューを行った。

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あにめたまご2017「げんばのじょう~玄蕃之丞~」堂山監督と古久保Pに訊く
あにめたまご2017「げんばのじょう~玄蕃之丞~」堂山監督と古久保Pに訊く "若手アニメーターのためにあえてハードルを上げた" 全 7 枚 拡大写真
堂山監督
いえ、今回みんなが改めて追認したという感じだと思います。アニメ制作は基本的に放送の為にやっているので完成させることが優先されますから。

今回は指導する側も意見をまとめてから若手さんに伝えるという形をとりました。通常の現場では、演出と作監と監督が個々にリテイクを出すので、修正点がズレる事もままある。ただそれだと若手さんは混乱してしまう。ですからワンフロアで作業をするのは当然として、育成側も濃密なコミュニケーションが大事になってくるなと思いました。普段は作業時間がバラバラなので実現しづらいんですが、あにめたまごは作業時間が「日中」と規定されているので、ある程度指導側も直接話しながら意見をまとめる、といったことが実行できたと思います。

(C)日本アニメーション/文化庁 あにめたまご2017
――若手原画さんが描いた中でこのカットはうまく行った、というところを教えてください。

堂山監督
もちろん全カット見てほしいですが、中でも玄蕃之丞が舞台上でマジックショーをするシーンが序盤にあって、そこは象徴的なシーンだと思います。それまで心情に寄ったお芝居が続きますが、ここで一気にケレン味が出るんです。しかも玄蕃之丞初登場のシーンでもあるので。担当した武本くんは一番リテイクを食らったんじゃないでしょうか(笑)。

――大変だったんですね。

堂山監督
マントのなびき、体の動き、どれをとっても教えるところがたくさんありました。武本くんもすごくがんばって直して、フィルムには次につながるような発見があります。ここは注意深く見ていただけるとうれしいですね。

――ありがとうございます。本作の制作を振り返っていかがでしたか?

堂山監督
今回は本当にやりたい人とやりたいようにやらせてもらいました。いろいろな方から「アニメーションは監督のやりたいことをする仕事ではない」と聞くことが多く、実際いろんな人の思いをまとめていく仕事だと思うんですが、今回に限っては、すごく好きにやらせてもらったなと思います。特に古久保Pのおかげですごく楽しませてもらったなあと思います。

古久保P
会社の作品として作っている以上、上から言われることもありましたけど、堂山監督の意向に添って企画も現場作りも進めていこうと意識していたところではあるので、今の話で、ちょっと、ウルッと来てしまいました……ははは(笑)。今回は商業ではなく、あにめたまごだからできるという意味でもいいプロジェクトだと思いました。

(C)日本アニメーション/文化庁 あにめたまご2017
――例えば本作から次の展開というのを考えていたりするのでしょうか。

古久保P
どうでしょうね……(笑)。監督の方で何か考えていることがあればぜひ、という形です。

堂山監督
直接の展開というのはないですね。ですが、作品単位ではなく、作画や仕上げ、撮影、美術といった各セクションでノウハウは蓄積されたんじゃないかと思います。
個人的には「民話というジャンルにはこれだけのものが詰まっていたのか」という発見がありました。何もなかった桔梗ヶ原に鉄道が走った。かつては井戸水もすぐ涸れてしまい、作物も育たなかった土地に、今や葡萄畑が広がっている。大変な苦労があって今の風景がある。今回舞台にした塩尻だけではなく、いろんな風景がどうやってできあがってきたのか、その土地で生きてきた人によって連綿と受け継がれてきたものがあると分かったこと自体が大きな発見でした。これが次の企画に繋がれば、というところですね。

――楽しみにしています。では最後に、本作の上映を楽しみにしているみなさんに改めてメッセージをお願いします。

古久保P
子どもから大人まで、家族みんなで楽しめる作品になっていると思います。そして、あにめたまごという企画を理解したうえで見ていただくのであれば、「この辺は(描くのが)大変だったんだろうな」といったところも画面の中から感じていただけるとうれしいです。

堂山監督
作画さんはもちろん、各スタッフさんが想像以上の力を出してくれてできあがった作品ですので、いろんな人に見てもらいたい、いろんな見方をしていただけたらうれしいですね。
そしてあにめたまごに関しては、いい企画だと実感しています。ただ、この企画が発端となって業界自体が若手アニメーターにとって過ごしやすい環境になっているのかと考えると、まだほとんど変化はありません。この企画を継続して広げていくことが重要だと思います。今回はじっくり時間をもらって、環境を整えて作らせていただきました。ですが極端な話、若手アニメーターが次の現場に行っていきなり躓いてしまうこともある。そうならないよう、業界全体が意識的に変化して行かなくてはいけません。あにめたまごの先にある現場が、若手アニメーターの十分な受け皿となりえるよう、自分もその変化の一端を担えればと思っています。
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《細川洋平》

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