TVアニメ「南鎌倉高校女子自転車部」工藤進監督インタビュー 初めて自転車に乗った時の感覚を思い出して | アニメ!アニメ!

TVアニメ「南鎌倉高校女子自転車部」工藤進監督インタビュー 初めて自転車に乗った時の感覚を思い出して

TVアニメ『南鎌倉高校女子自転車部』は、自転車に乗れないひろみを中心に描かれる女子高生×自転車がテーマの青春アニメだ。どんな想いで制作しているのか、工藤進監督に話をうかがった。

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TVアニメ「南鎌倉高校女子自転車部」工藤進監督インタビュー 初めて自転車に乗った時の感覚を思い出して
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高校の入学式。長崎から鎌倉に引っ越してきた舞春ひろみは、学校まで自転車で行こうとする。しかし彼女は自転車に乗れず、途方に暮れてしまう……。
TVアニメ『南鎌倉高校女子自転車部』は、自転車に乗れないひろみを中心に描かれる女子高生×自転車がテーマの青春アニメだ。
原作は松本規之が描いたコミックで、個人で出していた同名のイラスト集がきっかけとなりWeb漫画サイト「MAGCOMI」にて連載している。

『マルドゥック・スクランブル』『まじっく快斗1412』などで知られる工藤進監督は、何度もロケハンを重ね『南鎌倉高校~』の制作に挑んだという。青春、自転車、名所めぐりなど様々な要素をもつ同作。工藤監督はどんな想いで制作しているのだろうか。
[取材・構成/川俣綾加]

『南鎌倉高校女子自転車部』
http://minakama-anime.jp/

■青春物語と名所の魅力、どちらも楽しめる

──松本さんの原作を読んでどんな印象を受けましたか?

工藤進監督
アニメの企画が進み出したのがちょうど原作2巻が出た頃で、シナリオにするにあたってどう構成していくか考えました。原作では自転車部を作るのはもっと後ろだけど、前倒ししていったほうがアニメとしてはいいんじゃないかなと。
もうひとつは、TVアニメって通常は20~22分くらい尺がありますよね。けれどこの作品は秋月巴役の広瀬ゆうきさんと、秋月結花を演じている福緒唯さんによる実写パートもあるので、本編尺が短いんです。

──広瀬さんと福緒さんのおまけ映像はどんな内容でしょうか。

工藤監督
ショップを訪れたり、実際に自転車に乗ってみたりと作中でひろみや巴がやっていたことを追体験するような映像です。まず何を選ぶかなど、わかりやすいところからスタートしているので初心者にもわかりやすいですよ。

──本編尺が短めとなると、お話の構成も原作とは違ったものになっている?

工藤監督
ものすごく変わったということはないですが、前倒ししたりなどはありますね。自転車部のウェアもかわいいので早めに見せたかった(笑)。あとは、舞台が鎌倉であることもポイントになるだろうけど、作り手としてはあまり観光PRのようなアニメにはしたくないと内心思っていて。まずは物語やキャラクターの魅力をお見せできたらいいなと考えています。とはいえ、鎌倉もロケハンで訪れたら素敵な場所だと改めて感じたし、彼女たちの物語と色々な名所の面白さみたいなものが半々。


──その土地を魅力的に描くとなると、美術にも力が入ると思います。実際にある背景と架空のものだと、どちらが難しいですか? この作品の場合はどんな風に魅力的に作り上げているのでしょうか。

工藤監督
うーん、それはどっちもどっちかな(笑)。リアルを求めすぎると「写真でいいじゃん」になりますよね。どう省略していくかを考えないといけない。今回、美術さんたちのおかげでいい形で背景も作れたと思うので「行ってみたいな」と感じてくれたら嬉しいです。松本先生が漫画を描く時にロケハンした資料もお借りできたので本当に助かりました。

──画面づくりで工藤監督が工夫したポイントを教えてください。

工藤監督
自分で絵コンテを描いた話数では、レンズというか、レイアウト的な部分にはこだわっているかも。望遠的な画が好きなんですよ。

──そう感じるようになったきっかけは?

工藤監督
もともと実写がやりたかったこともあって、実写映画をよく見ていたんです。その影響で構図やレンズ感を強く意識するようになったんだと思います。昔は実写映画だとカメラ目線は絶対にやらないと言われていたので、アニメの絵コンテも視線を少し外したりとか。最近は実写のアニメもそういうのは関係ないかもしれませんが。


──影響を受けた作品、印象に残っているシーンはありますか。

工藤監督
海外ドラマの『ER 緊急救命室』が好きですね。ステディカムを持って長回しにして、役者が芝居をしているのをずっと追っているような。なので、アニメでも望遠で見せて、その中でキャラクターが細かい芝居をしているのがいいなと。絵コンテを担当した回はそういうのも出ていると思います。

──この作品は女子高生の青春と自転車のお話で、ひろみが自転車に乗れるようになった感動から世界が広がっていくのが面白いと思いました。「自転車に初めて乗れた」って気持ちはほとんどの人が経験しているものなので。

工藤監督
僕もそれを最初は考えていて、自分が最初に自転車に乗った時はどうだったんだろうって振り返ったんですよ。小学3年生の頃だったかな、初めての自転車を親に買ってもらって練習して、ようやく乗れるようになり同級生から「乗れたね!」と言われた時の感動。自転車で山に行きカブトムシやクワガタをとったりした思い出も。小学3年生と高校生じゃ違うかもしれないけど、根底に共通するものはあるはず。

──ひろみたちは自転車からスタートしてロードバイクにも乗るようになりますが、ロードバイクを細部まで描くのは大変だったのでは。

工藤監督
3Dスタッフのみなさんには頭が上がらないですね。この作品の場合は総カット数が250くらい。他の作品だと3Dを使うとなると平均して50カットくらいかなと思うのですが『南鎌倉高校~』だと200カット以上になることも。ロードもちゃんと2017年モデルも本編で使っていますよ。自転車監修の岡本(英樹)さんがしっかり見てくださっています。


──TVアニメではどんなところを期待してほしいか、読者にメッセージをお願いします。

工藤監督
初めて自転車に乗った時の楽しさや感覚を思い出してもらえたらいいなと思います。みなさんそれぞれ子供の頃に自転車に乗った記憶もあるはず。自転車は大人も楽しめるものだし、『南鎌倉高校~』は舞台を訪れることもできる。作品を見てみなさんに何かしらの広がりを感じてもらえれば幸いです。ぜひアニメを見て色々なものを感じてください。

《川俣綾加》

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