「日常系アニメ」としての『あんハピ♪』【2016年の一本】 | アニメ!アニメ!

「日常系アニメ」としての『あんハピ♪』【2016年の一本】

年末年始の特別企画「2016年の一本」。ライターの古戸圭一朗さんが選んだのは『あんハピ♪』、その魅力とは?

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「日常系アニメ」としての『あんハピ♪』【2016年の一本】
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2007年に放送された『らき☆すた』のブレイクを経て、すっかりアニメの一ジャンルとして定着したと言えるのが「日常系アニメ」だ。そして日常系アニメの多くは、「萌え4コマ」と呼ばれるマンガの形態にその出自を持つ。なかでも芳文社が2002年から発行している「まんがタイムきらら」およびその派生誌は、『ひだまりスケッチ』『けいおん!』『ゆゆ式』など、数多くの日常系アニメの原作を世に送り出してきた。
今年も『三者三葉』や『NEW GAME!』などの「きらら系アニメ」が放送されたが、この中から『あんハピ♪』を今年の一本として紹介することにしたい。

『あんハピ♪』は、「まんがタイムきららフォワード」にて琴慈により連載されている同名のマンガが原作。他のきらら誌が先述のように4コマ漫画雑誌であるのに対し、フォワードはそうではない点が特徴だ。フォワードからは、2014年に『ハナヤマタ』、2015年に『がっこうぐらし!』がアニメ化されたことも記憶に新しい。
『あんハピ♪』では、名門高校「天之御船学園」に入学した5人の少女たちの日常が描かれる。天之御船学園は勉強・スポーツ共に有名な名門校だが、その中に一クラス「負の業」すなわち不幸を背負った生徒を「幸福」へ導くための特別クラスが存在する。そのクラスに集った花小泉杏、雲雀丘瑠璃、久米川牡丹、萩生響、江古田蓮の5人の少女は、それぞれ背負った不幸に抗い幸福をつかむため、高校生活を送ることになる。

『あんハピ♪』では、メインキャラクター5人それぞれが背負った「不幸」が何度も描かれる。しかし彼女たちの「不幸」がストーリーに深刻な影を落とすことはない。
日常系作品において、日常の負の部分が描かれないという指摘はこれまでに繰り返しなされてきた。それは『あんハピ♪』において、より踏み込んだ形であらわれていると言えないだろうか。
日常におけるネガティブな要素である「不幸」を作品の中核に置きながら、彼女たちの「不幸」は多くの場合ギャグという形で、平穏な日常の中に取り込まれてしまう。すなわち『あんハピ♪』は、日常における負の部分を「描かない」のではなく、負の部分すらポジティブに変換して取り込んでしまう、ある意味究極にユートピア化された日常を描いているのだ。

日常系アニメの嚆矢を2002年に放送された「あずまんが大王」とするならば、2017年には日常系アニメも15年ほどの歴史を重ねることになる。『あんハピ♪』もその系譜に連なる多様な日常系アニメの一作として、記憶にとどめておきたい作品だ。

▼プロフィール
古戸圭一朗
駆け出しの域を抜け出せないライター。同人誌即売会への参加が趣味で、主にコミックマーケットや文学フリマに出没している。

《古戸圭一朗》

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