「ルーヴルNo.9 ~漫画、9番目の芸術~」漫画家 五十嵐大介さんインタビュー 水中は3次元の世界、空の世界と似ていると思う | アニメ!アニメ!

「ルーヴルNo.9 ~漫画、9番目の芸術~」漫画家 五十嵐大介さんインタビュー 水中は3次元の世界、空の世界と似ていると思う

インタビュー アーティスト

五十嵐大介/『ニケのうた』 (C)Daisuke Igarashi
五十嵐大介/『ニケのうた』 (C)Daisuke Igarashi 全 2 枚 拡大写真
ルーヴル美術館特別展「ルーヴルNo.9 ~漫画、9番目の芸術~」が9月25日(日)まで森アーツセンターギャラリーにて開催中だ。展覧会では、日本の漫画家、フランス語圏のバンドデシネ作家ら計16名がルーヴル美術館をテーマに描いた作品を中心に、300点以上もの原画や資料、特別映像などを豊富に展示している。
『魔女』『海獣の子供』などで知られる漫画家 五十嵐大介さんは「サモトラのニケ」を題材に、幻想的で美しい作品を描いた。五十嵐さんに作品への想いや、展覧会についてお話を伺った。
[取材・構成=川俣綾加]

ルーヴル美術館特別展 「ルーヴルNo.9 ~漫画、9番目の芸術~」
http://manga-9art.com/

■海中に沈んだ「サモトラのニケ」の物語
──ルーヴル美術館が中心となってスタートした企画ということで、この展覧会はこれまでにない歴史的な試みだと思います。お話を受けた時の心境はいかがでしたか?

五十嵐大介さん(以下、五十嵐)
ルーヴル美術館そのものが「お題」という事だったので自分に何が出来るかなと。他の漫画家さんやフランスの作家さん方とは違うアプローチがいいんじゃないかとか、美術館に展示する事が前提だったので横文字表記が見やすいかな、ならページも左から読む使用がいいかも…とかいろいろ考えました。こんなに大きな展覧会のイメージはもっていなくて、今日会場に来てみたらとても大掛かりで。とても面白かったです。

──展覧会全体を見た感想を教えてください。

五十嵐
普段は見る機会のない作品が見られて楽しいです。ニコラ・ド・クレシーさん、坂本眞一さんの作画の工程を紹介した動画は参考になるので嬉しいですね。手順がどうなっているのか、坂本さんはこうやって拡大しつつ細部を描いているのか、とか。自分はアナログで描いているのですごく興味深いです。松本大洋さんのラフな段階の絵は目にしたことがなかったので貴重な機会でした。

──バンドデシネの魅力をどのように捉えていますか?

五十嵐
日本だと最近は写実的、リアリティに寄った漫画が多いですよね。バンドデシネの作家さんは、それと比較すると遊びを入れるなど自由度が高い作品が多いのかなと。コマの展開の仕方も、小説を読むようにじっくり読むように設計されていますよね。バンドデシネはひとつひとつのコマが絵画で、それをつなげているようにも見えます。日本の漫画は映像のように流れるイメージですね。

abesan──五十嵐さんは「サモトラのニケ」を題材に物語を描いています。どういったものを参考に作品のイメージを膨らませたのでしょうか。

五十嵐
ルーヴル美術館の所蔵品についてざっと調べてみようとルーヴルのWebサイトを開いたらまず始めにニケが目に入ったんです。大学の石膏室にもあって、石膏デッサンでもよく使っていたこと、ちょうど半獣半人の漫画も書いていたこともありシンパシーを感じたんです。顔や腕がないのも歴史や物語を感じさせてイメージをかき立てられますよね。

──海中に沈んだ「サモトラのニケ」はとても幻想的でした。

五十嵐
最初は飛んでいるところを思い浮かべてはいたのですが、それがすぐに海の中に変わってしまったというか。雲と空よりは水中で、ザトウクジラのように光の網を身にまとって泳いでいるイメージになったんです。今回はニケ自身は羽ばたきませんが。この像が船の船首に立つ女神像で、海に深く関わったものなのも理由のひとつにあると思います。ニケ像が人に発見される以前なのか、はるか未来にルーヴルが海中に沈んでしまった世界なのか、自分の中で海中の絵がしっくりきたんです。

──岩手県に住まいを移し、そこでの生活をもとに『リトル・フォレスト』を描くなどご自身のいる環境によって描くもの、発想するものが異なり、それが作品に表れていると感じます。海というテーマは、現在住んている場所(鎌倉)の影響もありますか?

五十嵐
それはけっこうあると思いますね。海が近いのでよく散歩にも行きます。半獣半人のモチーフは絵本『人魚のうたがきこえる』でも描いていて、半身がエイの人魚が出てきます。そこで海はもっと描きたいなという想いもありました。

──ちなみに、五十嵐さんの好きな海はどんな海でしょうか。

五十嵐
どんな日でも行けば何らかの発見があるので面白いですよ。でも特に好きなのは夏の夕方の海。日によってなのか気象条件によってなのかはわかりませんが、空気がまろやかに感じられる時があって。晴れていて、日が沈む少し前。光の感じや空気の感じが居心地がいい。うまく言えないのですが感じるものがありますね。風と波の音と夕陽に包まれて砂浜を歩くのが好きです。

──『海獣の子供』ではエイが圧倒的な存在として描かれています。『人魚のうたがきこえる』も、今回の展覧会の作品にも半身がエイの人魚が登場します。五十嵐さんにとってエイはどんな生き物?

五十嵐
どの水族館に行ってもエイって水槽で目立つんですよね(笑)。展覧会に向けて作品を描いている時、人魚を登場させたかったのですがよくあるイメージだと面白くないので、ひねりを加えたいなというのもありあの形の人魚にしました。エイの泳ぎ方って羽ばたいているように見えませんか。 あの羽ばたいているような泳ぎ方っていいなと。水中は3次元の世界。それって空の世界と似ていると思うんです。エイは飛んでいるようにも泳いでいるようにも見える。のびやかさとかも出しやすいかなと思いました。

──展示されている五十嵐さんの作品は、想像や解釈の余地があるものいなっていて、展示の工夫も相まって海中にいるような気分になれますね。

五十嵐
今回はセリフも入れていません。なので、自由に見ていただけるといいなと思います。展示の両側が海のように組み立てられているのも素敵で、展覧会全体の雰囲気も含めてぜひ楽しんでください。

──今日はありがとうございました!

《animeanime》

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