「プラットフォームの時代に我々ができること」VIPOセミナーで福井弁護士が語る | アニメ!アニメ!

「プラットフォームの時代に我々ができること」VIPOセミナーで福井弁護士が語る

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「プラットフォームの時代に我々ができること」VIPOセミナーで福井弁護士が語る
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8月3日(水)、映像産業振興機構(VIPO)が主催するセミナー「配信プラットフォーム契約の攻略法」が築地・東劇ビル2階のセミナー会場にて行われた。本セミナーでは数多くの著作権裁判を請け負う福井健策弁護士を講師に招き、世界規模の配信プラットフォームとの契約を結ぶ際のポイント等を学んだ。

■配信プラットフォームの時代

大手配信プラットフォーム「YouTube」の中で現在世界最高の閲覧数を誇っているのがPSY『江南スタイル』である。総再生回数は25億回を超え、現在もなお伸び続けている。一方、YouTube全体が1日で記録するPV数が50億回。つまりPSYの総再生回数はYouTubeが半日で達成する数に過ぎないのだ。我々は凄まじい数のコンテンツ=ギガコンテンツの時代にいると福井弁護士は言う。その中で著作権というものはどう変化していっただろうか。

現行の著作権法が誕生したのは1970年。2020年には50周年を迎える。コンテンツの数や質は大きく変わり、コンテンツの増加は価格破壊を招いている。基本無料で視聴できるYouTubeなどのアマチュアコンテンツに押される形で商用コンテンツの価格も下げざるを得ない状況になっているということだ。「いいもの」が無数にある中、ビジネスは「どうマーケティングするのか」といったデータ解析やマーケティングが重要になって来ている。この動きはまさに創作物そのものを護っていくというところから創作物を支える場に焦点が移っていることを意味している。コンテンツホルダーの時代から、プラットフォームの時代に移っていると福井弁護士は語る。

現在、世界企業の時価総額ランキング第1位はApple。第2位はGoogleで第3位はMicrosoftだ。またAmazonは第7位であり、Facebookと競い合っている現状だ。まさに「プラットフォームの時代」を象徴する順位関係でもある。

■プラットフォーム契約の特徴

2015年10月より、GoogleおよびYouTubeは新有料サービス「YouTube Red」をアメリカでスタートさせた。月額9.99ドルで全動画広告無しの見放題、ダウンロードも可能、GooglePlayミュージック3500万曲が聴き放題というサービスだ(日本ではGooglePlayミュージックの聴き放題だけで1000円/月)。このサービスを始めるにあたって、YouTubeパートナーとして広告収入を得ていたコンテンツホルダーに対しGoogleは新契約条項を提示し、サインしないものはパートナーではなく一般ユーザーに戻す、と告示したのだという。

新契約条項の提示は、日々サービスをアップデートしていくプラットフォームにとっては珍しいものではない。だがコンテンツホルダーは新条項を「飲んで続ける」か「拒んで離れる」かの選択を迫られる。そこに交渉の余地は与えられていないのだ。

アプリ・デベロッパー(開発者)も同様のことが言える。App StoreやGooglePlayの事前審査は厳格でありながらも、基準は常に明かされていない(ブラックボックス化)上、コンテンツ提供の条件はプラットフォーム側からの一方的な要求が多い。権利者がコンテンツの利用期限を設定することはできないし、自社決済手段は必須、高額な手数料も設定されている。更には、Googleであれば検索結果に自社サイトを通過しているものが優先して表示されるのだ。

AmazonはKindleにおいて出版社に対する「販売支援サービス」を2014年にスタートさせた。これはAmazonが独自の評価基準で出版社をランク分けし、それに基づき「ユーザーレコメンドの登場比率」「在庫の維持」「レポート提出」などを支援するというもの。本サービスに契約していない出版社はいずれのサービスも受けられないが、契約していたとしてもシェアが上がれば契約者個々の旨みは薄まってしまうという厳しい状況ともなる。

プラットフォームから提示される契約の特徴は、実質一方的であり交渉不可能であること、コンテンツの部分提供ではなく全量提示を強制すること、マーケティング面の縛り、最恵国待遇の多用(例えば最安値を全世界に適用することなど)などが挙げられる。これほどまでにプラットフォームの握る力は強いものとなっている。

■プラットフォームになぜ力は集中するのか

プラットフォームに力が集中するのは、規模の経済が働いているからと考えられている。多数が参加すればするほどメリットは増え、結果さらに数が増える。ネットワークによるボーダーレス化、「検索」とプラットフォーム側の恣意的な「リコメンド」が結びつくことの容易性、冒頭に挙げたプラットフォームへの構造変化なども原因であると福井弁護士は述べた。

メガプラットフォームには今や膨大なコンテンツやビッグデータが蓄積し、ユーザーのアクセスも集中している。この情報やモノの創造/流通/受容を一手に管理しているとも見える現状はあまり好ましくないと福井弁護士はいう。ルールメイクは超国家的であり特定国の法制度に縛られにくいため、自社で法律を作っているようなものなのだ。つまりユーザーアカウントを規約で縛りつつも、アカウントの凍結や削除などは極めて一方的・かつ容易にプラットフォーム側は行える。メガプラットフォームの規約に反したものはその世界から抹殺することが容易なのである。それではプラットフォームの実質法律でもある規約とはどういったものなのか、以下で理解を進めた。

■YouTubeパートナー規約では

「YouTubeパートナー規約」を例に取った。「YouTubeパートナー規約」では契約時に読まなくてはならないポリシーが4種類、規約本文だけでも23000字という分量に及ぶ。「全文読むのは困難だ」と福井弁護士は語った上で、ポリシーの要約を説明した。

契約期間は30日前の予告でいつでも解除可能だが、アップロードされた動画はYouTubeが保持し続ける。YouTubeが保持するライセンスの対象は投稿した全動画。販売地域は全世界。販売方式は包括方式で、行使されてはいないものの「二次利用権やパッケージ権も有している」。また販売の義務はYouTube側にはなく、販売停止もYouTubeが自由に設定できる。販売価格はYouTubeが設定し、権利者には純収入の55%が支払われる。また規約変更に関してはYouTube側はいつでも可能であり、利用者は変更後の規約に一方的に拘束されることとなっている。

福井弁護士が特に強調したのが「準拠法と裁判管轄」についてだ。YouTubeはカリフォルニア州法に準拠しており、サンタクララ郡の専属管轄、という契約になっている。これは例えば権利問題で揉めた際に、裁判はYouTubeのお膝元で争うということになる。福井弁護士は自身の経験から、アメリカのコンテンツ系の訴訟では、弁護士費用が1000万円は軽くかかり、億単位になることもあると語った。非英語圏の日本からすれば圧倒的に不利な状況での裁判というわけだ。そのため、契約締結時に注意する点として「裁判管轄は自国(日本)か、それが難しければ第三国(当事国とは関係ない国)を指定することである」と福井弁護士は強調した。これにより費用や精神的負担はかなり軽減されると、自身の経験を交えながら語った。

■我々がメガプラットフォームと対峙するためには

コンテンツホルダーが巨大なプラットフォームとうまく付き合っていくにはどうすればいいのか。そこには2つの要素があるという。1つは共存関係を築き上げること。それには先ほど述べたように準拠法や裁判の管轄は可能な限り譲らないことなどが大きなポイントとなってくる。2つ目は独自のプラットフォームを育て、コンテンツを発信していくこと。これは不利な規約を結ばざるを得なくなったとき、メガプラットフォーム以外に場を確保するため。そして、オリジナルのコンテンツを豊富に容易に発信していけば、ひいては海賊版の対策にもなると福井弁護士は言う。

EUでは一足先に挑戦を始めている。2008年に始動した巨大電子図書館「ユーロピアーナ」だ。全欧州の2000以上のデジタルアーカイブをネットワーク化。2016年6月からは5300万点以上の文章・音楽・映像等をデジタル公開した。日本では国会図書館がデジタルアーカイブが50万点であることを考えてもユーロピアーナは莫大な資料数だ。EU圏内の人間は文化的な情報・資料に関してはGoogleなどではなくユーロピアーナに当たればいい、という状態にまで及びつつあるという。

もし、コンテンツホルダーが不利に立たされてしまったらどうするか。福井弁護士は独占禁止法など、競争法理を強気に適用させるべきだと説く。2016年には「日本再興戦略2016」が閣議決定されたことを挙げ、「プラットフォーム契約に独占禁止法に違反する事実が認められた場合、公正取引委員会が動くケースがより多くなるだろう」と話した。
しかし公正取引委員会が動くためには権利者からの情報を集めている状況であり、即時動くというのは難しいという。「アプリ業者は情報をたくさん寄せてくれていますが、出版社はほとんどが黙り込んだまま。横との足並みを揃えようとしてみんな言わないんです。動くことが大事です」と福井弁護士は語った。

2時間に及ぶセミナーの最後は質疑応答の時間に。詰めかけた受講生から次々と質問が飛ぶと、福井弁護士は実例を交えながら丁寧に返答し、大盛況のセミナーは終了した。先日スタートした「Kindle Unlimited」など、巨大プラットフォームは次々と場をアップデートさせている。コンテンツホルダーはただ従うだけではなく、手を打つことも考えるべきであり、それは有効なのだと痛感させられた講義だった。

《細川洋平》

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