この作品実写映画化のニュースを知り驚きと動揺を隠せなかった人も多いことだろう。一体どんな映像になっているのか、映画公開によってついに明らかとなる。
これまでにも漫☆画太郎作品を実写化してきた山口雄大監督と山田太郎役の松山ケンイチさんに、制作の裏側、役作りなどを伺った。
[取材・構成:川俣綾加]
『珍遊記』 http://chinyuuki.com/
■ 心も体も着ているものを脱ぎ、裸になった作品
――実写化はどのように決まったのでしょうか。
山口雄大監督(以下、山口)
漫☆画太郎先生の作品はこれまでも『地獄甲子園』などを実写化していて、次にやるなら『珍遊記~太郎とゆかいな仲間たち~』かなと10年前から思っていました。でもマンガのキャラクターそのままやると三頭身の子供がやることになるし、それだと笑えない。他にも色々と考えて、難しいなと感じていたら3年前にDLEの紙谷零プロデューサーから本格的に実写映画を作りたいと声をかけてもらったんです。
――難しいと感じていたんですね。そこから実際に制作に踏み切ったのはなぜ?
山口
画太郎先生の作品を実写化したのは僕だけなんです。他の人にそれをやられるのが嫌だったんです(笑)。やり方はわからないけれど、開発しましょうとスタートしました。
――なぜ松山さんに山田太郎役を?
山口
最初は芸人さんを集めてバラエティの延長的にやろうという話がありました。でも今回は子どもからお年寄りまでみんなが観ることができる、メジャー感のある作品を目指そうということになったんです。画太郎先生からも同様の意見をもらいったこともありますが、僕もこれまでとは違うアプローチがしたかった。そうした時、頭に浮かんだのが松山ケンイチ君だったんです。画太郎先生が脚色を担当してくれた『ユメ十夜』の庄太郎役も嬉々として演じてくれたのが印象に残っていて。『珍遊記』の世界観は特殊なので、それをきちんと理解して演じてくれるだろうと考えて、恐る恐る聞いてみました。
――松山さんは山田太郎役の話がきてどう感じましたか?
松山ケンイチさん(以下、松山)
やっぱり、画太郎先生の絵がもっているパワーとインパクトは生身の人間では表現できないです。その上で僕が必要だなと思ったのは、山田太郎という人間がそこにいることを表現するにはどうすればいいのか。表情や佇まいが大切だと感じました。山口監督と話していくうち、キャラクターとしては『七人の侍』の菊千代(三船敏郎)がもつ、野生の生き物のような要素が入ってきてもいいんじゃないかと。そうやって少しずつ見つけながらやっていきました。
山口
やりながら探っていった感じだったよね。最初に撮影した酒場のシーンでは本当に手探りで、松山君も「声の出し方がわからない」って悩んでて。マンガの絵とは全然違うじゃないですか。ビジュアルは違えど、山田太郎にいかにしてなれるか。難しいキャラだと思いますよ、物語を通してみても何も成長しないし、何も成し遂げない。うざいから相手をやっつける、みたいな行動原理だし。
松山
異質な作品ですよね。
山口
なぜ、今このタイミングで『珍遊記』を映画に?と思った人、たくさんいると思うんですよ。でも画太郎タイムなんてこの世に存在しないから、制作を迎えられるメンツが集まった今が実写化その時なんです。
――松山さんはこれまでにも、マンガ原作の個性の強いキャラクターを演じています。今回はこれまでとはまた違った挑戦になったのではないでしょうか。
松山
原作はアテにできない一方で、モデルは必要でした。これまでのマンガ原作の作品だと、マンガの流れで演じることもできましたがそうじゃなかった。菊千代の三船敏郎さんと千原せいじさんの存在が僕にヒントをくれたと思います。松岡修造さんのカレンダーもいい参考になりましたね。
山口
アニメのワンシーンを見たりと撮影中もすごく研究してたよね。
――アニメは何を参考にされたのでしょうか。
松山
『天元突破グレンラガン』でアンチ=スパイラル役を演じた上川隆也さんです。必殺技を出す時、魂が口から出るくらいの勢いでセリフを叫んでいて。それをやりたかったんです。
山口
こういう作品は躊躇したらダメで、やるなら思いっきりやらないといけない。役者さんたちもそういう熱をもって挑んでくれたので、画面からそれが伝わればいいなと思います。画太郎先生もフラストレーションの固まりのような描き方。「少年誌で誰もこんなことやってことないだろ?」と勢いを感じます。そういうのは大切。