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「シドニアの騎士」から「亜人」、さらにその未来 ポリゴン・ピクチュアズ塩田周三社長に聞く

『シドニアの騎士』から日本での製作に本格参入したポリゴン・ピクチュアズ。なぜいま日本市場なのか、世界はどう目指すのか、代表取締役の塩田周三氏にお話を伺った。

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■ 未来はポジティブ、日本のアニメ界の自己改革が起きるかが鍵

――大きな質問になるんですけれども、アニメーションはいま大変革期といわれることがあります。テレビ誕生、OVAの登場に続く3番目の波じゃないかと。アニメーションビジネスの現場に立っているなかで、実際に変わっていると思いますか。

塩田
日本のアニメーションビジネスは、ここ2年間ですごく変わっている気はします。ビジネス自体が変わっているかはともかく、変わろうという兆しは強く感じます。
そもそも僕らのようなデジタルアニメーションが受け入れられたのがまさに2年ぐらいです。『シドニアの騎士』が出てきて、『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』があり、『楽園追放』『STAND BY ME ドラえもん』、いま『亜人』です。デジタルアニメーションが表現手法としてリスペクトを得るようになった流れです。
そして、ブルーレイ、DVD頼りだったビジネスのなかでNetflixという黒船が来て、必ずしも大きくない会社と組んで一緒に配信をする。こうした動きもちょっと前までは信じられない出来事じゃないですか。
ストリーミングが大きなレベニューストリーム(収入源)になり始めているのはもう実証されています。今後はそれが続くのか、これによって海外の展開はどうなるのか。変わろうとしているとすごく感じますけどね。

――クールジャパンのようなことが10年以上前に言われていて、でもいまひとつ花開かないところがあります。状況が変わることによって日本と海外はこれまでより近くになっていますか。

塩田
近くなり得ると思います。日本のアニメはリスペクトされていますよ。だから、それを出していきましょうという話がずっとあったわけです。けれども、問題は正規で流通する場所が今までなかったことです。日本の表現は大幅に編集しない限りテレビチャンネルにのせられませんでしたから。作ったはいいけれどもどこにどうやって流通するのかの「解」が示されなかったわけです。
僕が可能性があると思うのは、ネット配信が出てくることによって、どこで流通するのかという「解」は少なくとも見つかったことにあります。ユーザーが自ら選んで見に来て、しかもユーザーの年齢や背景を把握できる仕組みが出来上がりました。日本で配信しても、最初から多言語化対応さえしていれば届きます。みんながきちんと会費を払ってくれる可能性があるわけですよ。

――そうすると、未来にはポジティブな感じですね。

塩田
ただ、ポジティブな未来に対して、一方で日本のアニメ界の自己改革が起きるかどうかはやはり大きいと思っています。ポテンシャルが上がることに対して行動がついてくるかは大きなハードルになると思います。

――そうしたなかで海外とのビジネスを頑張ってきた、今は日本のアニメも作り始めた。次にポリゴン・ピクチュアズはどこに行くんですか。

塩田
戦略はその時々で変わります。新しい発見の中で軌道修正をするんです。日本でアニメーションをやっていて思うのは、日本は表現については本当に自由だと。これは日本ならではの土壌でなかなか他国には追い付けません。
長らく僕らは日本のピクサーになるんだと言ってきましたが、そのマーケットに入るのはやはり大変な状況があります。

――製作予算もかなり違います。

塩田
そうですね。だったら、僕らなりのピクサーたちに対する勝ち方は日本的な攻め方が現実的なんじゃないかと思っています。きちんとユニバーサルに分かり、大人も楽しめる日本的な表現を世界に対して出していく。そのマーケットは、日本の企業以外はほとんどプレーしていないので、これを市場として形成していく。それは各国のいわゆるおたく層からまず始まるのかもしれませんが、そこから少しずつ拡大していく。
次の一手としてはやっぱり日本のアニメの枠を超えなければいけない。すごく日本的だけれども、アニメという枠組みを超えたものを作っていかなければと思っています。日本のアニメ表現とCGならではの表現を大胆にミックスして新しい表現、内容を作っていきたいですね。そうすれば日本のアニメの既存のルールを超えることができるんじゃないかという気がしています。

――本日はありがとうございました。



[/アニメ!アニメ!ビズ/www.animeanime.bizより転載]
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