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「NUNOANI塾」はプロ向けに:日本のアニメ作りが変われば、未来も変わる。布川郁司氏インタビュー:後編

アニメーションの演出やプロデューサーなどに必要なプロの知識を学ぶ「NUNOANI塾」を開講するぴえろ創業者で塾長の布川郁司氏に訊くインタビュー後編。[構成・執筆=渡辺由美子]

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■ 海外のファンは日本人が知らないところにいる

――先ほど、「今の日本のアニメーション全体を考えたときに、プロデュースは非常に大事」というお話をうかがいましたが、プロデュース業はなぜ大事になってきたのだと思いますか。

布川
日本のアニメは、これからは海外も視野に入れていくべきだと思います。
アニメーションの将来を考えたときに、今後は日本のマーケットだけだと人口が減少していくから発展性としては物足りないですよね。

今の1億2千万人のマーケットは、作り手側にとっても心地いいんです。ほどほどで回収できるから。でもこのままでは続かない。
韓国は、もっと攻めています。国内人口が少ないから内需だけではペイできない。だから「韓流」ブランドとしてドラマでもアイドルでも上手にマーケットを作った。日本もこれからは世界にプロデュースしていくことが重要だと思います。

――『NARUTO -ナルト-』シリーズは、海外でも大きな人気を得ました。

布川
『NARUTO』は、最初から海外を視野に入れていたわけではなくて、海外のお客さんが見つけて支持してくれました。「ニンジャ」という題材自体も人気なんですけど、原作者の岸本斉史さんが描くオリジナルで無国籍な世界が良いという方も多いです。

『NARUTO』以外にも、日本にいる僕たちが知り得ないところに海外のお客さんがいっぱいいます。日本のアニメ人気を海外で経験すると、すごいですよ。昔作られた作品にも大きな支持が集まっていいて。

『クリィミーマミ』の高田ちゃん(高田明美さん)がイタリアに行くと、人がものすごく集まってきます。

ドイツと合作で『みつばちマーヤの冒険』のセカンドシーズンを作ったんですけど、ドイツだけでなく、周辺のオーストリア、ベルギーといろんな国の人たちが「小さいとき、マーヤの冒険を見ていました」と僕に言ってくれるんです。マーヤを描いてあげたらもうみんな感動してくれて、こちらがびっくり(笑)。

ドイツで知り合った若い人の家に招待されて行ったら、お父さんは裁判官、お母さんは国語教師というお家で、ご両親が言うんですよ「うちの子は『ニルス』を見たおかげでこんなにいい子に育ちました」ってね(笑)。

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――「海外向け」というと、今の日本の作風を変えて、海外の人向けの作風にしなければならないのかという想像をしますが、昔作られたアニメは、一部を除くと海外向けにローカライズされていないですよね。なぜ海外でも人気が出たのでしょうか。

布川
これはお客さんの目が日本のアニメに慣れてきたことが大きいと思います。『キャンディ・キャンディ』も、最初に海外で放送したときは「目が大きすぎる」「目のオバケだ」とかさんざん言われたものです。でもだんだん慣れて人気が出た。

僕が昔初めてドイツに行ったときも、ドイツの人は「アルプスの少女ハイジ」のハイジの顔を見てびっくりしていました。「あのぽっぺたの赤いマルは何だ、絵本で読んだのとまるで違う」と。
でも何度か放送したら、そのうちに「子供たちが感動して泣いた」という声が届いてきた。

僕はこれまで見てきた海外の反応から、日本のアニメ作品は、海外の人向けに作り替える必要はないと思っています。そのままで十分、魅力的で強いコンテンツになると思います。
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《渡辺由美子》

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