新時代のアニメビジネスを考察する1冊 「コンテンツビジネス・デジタルシフト」 | アニメ!アニメ!

新時代のアニメビジネスを考察する1冊 「コンテンツビジネス・デジタルシフト」

2012年5月にNTT出版社から、まつもとあつし による新著『コンテンツビジネス・デジタルシフト 映像の新しい消費形態』が発刊された。著者のまつもとあつし は、ソーシャルゲームや電子書籍、映像など、

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「コンテンツビジネス・デジタルシフト」まつもとあつし 著エヌティティ出版
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2012年5月にNTT出版から、まつもとあつし による新著『コンテンツビジネス・デジタルシフト 映像の新しい消費形態』が発刊された。著者のまつもとあつし は、ソーシャルゲームや電子書籍、映像など、幅広いコンテンツの新しい動きを縦断的に追っているジャーナリストである。

そうした著者の背景とタイトルを念頭に置いて本の扉を開くと、やや驚かされる。本書がもっぱらアニメビジネスについて語っているからだ。
3章構成のうち、第1章は「メディアとアニメビジネスの変化」、第2章は「アニメコンテンツの変化」とまるまるアニメについてあてられている。特に第1章はアニメビジネスの現状や製作委員会の仕組み、映像パッケージの問題に触れるなど、この分野の入門書的な性格が持たされている。
第3章では、さらに映像のウィンドウ戦略(映像展開の時期や方法)について話を広げていく。しかし、ここでも例として挙げられるのは、『イヴの時間』、『ブラック☆ロックシューター』といったアニメ作品である。

こうした内容にもかかわらず、敢えてタイトルに「アニメ」の語句を用いない。それは、ここで語られるアニメビジネスの変化と課題、そして可能性が、アニメのジャンルにとどまらず、映像、そしてコンテンツ全般に共通しているからだろう。
つまり、まつもとが本書で提起するアニメのウィンドウとプラットフォームの変化は、実写映画、音楽、出版、ゲームなど幅広いコンテンツに共通するものだからだ。ここに様々なコンテンツを縦断して取材を続けるまつもとの本領が発揮されている。アニメを特殊なジャンルでなく、コンテンツの一分野として考える視点だ。
一方で、他のコンテンツに比べてビジネス規模が比較的小さなアニメは、しばしば問題が精鋭化し、他の分野に先駆けて大きく変化することが多い。ネット配信の普及、二次創作との対峙などもそこに含まれるだろう。「コンテンツビジネス・デジタルシフト」では、そうした問題に深く切り込んでいるのもうれしい。

もうひとつ本書で見逃せないのは、引用、文献の確かさ、データの豊富さである。これは「コンテンツビジネス・デジタルシフト」が、まつもとの修士論文をベースにしていることが理由になっている。
豊富なインタビューは、まつもとの論旨に説得性を与える。そして、事例に出された『イヴの時間』の劇場興業データ、時系列で追った動画配信のアクセス動向などは特筆すべき資料と言っていいだろう。
[数土直志]

『コンテンツビジネス・デジタルシフト 映像の新しい消費形態』
http://www.nttpub.co.jp/search/books/detail/100002195
まつもとあつし 著
エヌティティ出版
発売日: 2012年5月10日
定価: 2730円
サイズ: 四六判

《animeanime》

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