米国から見た日本のコンテンツビジネス JETROレポートから | アニメ!アニメ!

米国から見た日本のコンテンツビジネス JETROレポートから

コンテンツ産業関連の海外調査、レポートを作成、公表している日本貿易振興機構(ジェトロ)は、この4月に新たな視点の調査レポートをアップした。

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 コンテンツ産業関連の海外調査、レポートを作成、公表している日本貿易振興機構(ジェトロ)は、この4月に新たな視点の調査レポートをアップした。「我が国のコンテンツの海外における「ゲートキーパー」プロファイリング調査」米国編とフランス編である。
 タイトルからはやや分かり難いが、いずれも両国で日本のアニメ、マンガ、映画、テレビ番組などを手がける企業のエグゼクティブに対する集中インタビューである。米国編で7社、フランス編で15社が取り上げられている。日本コンテンツに関わる現地のビジネスパーソンの考え方を知るうえで貴重な情報だ。

 米国編には7社8人が登場する。人数は限られるが、情報バリューの高さの観点からかなり厳選された企業である。日系企業は含まれず、これまで日本のメディアにあまり取りあげなかった企業が中心となった。
 マンガ関連では、2大出版社体制が長らく続く米国コミックス業界の第三勢力として注目されるIDW、マンガ出版のYen Press、映画・テレビ番組のサークル・オブ・コンフュージョン、フリーマントルメディア、サバン・ブランズ、キャラクター関連のビッグテント・エンタテインメント、そしてアニメ分野では業界最大手のファニメーションである。話し手はそれぞれの企業で経営判断を行うエグゼクティブで、そうした点からも興味深い内容だ。

 海外からの意見は含蓄深いものが多い。例えばYen Pressのカート・ハスラー氏の日本の違法サイト対策が不十分だという強い指摘、マンガのデジタル権に対する考え方、ファニメーションのゲン・フクナガ氏の日本企業のネットビジネスの重要性に対する認識不足との発言は傾聴に値するのでないだろうか。
 一方で、日本の立場からは、同意しがたい意見もあるだろう。重要なのは、相手の意見に合わせることでなく、その考え方を知ることである。現場でコンテンツビジネスに携わる人たちは、日常的に海外のビジネス関係者に接している。しかし、そうした場面では個別のビジネスにフォーカスしがちだ。今回のようにあらためて、大きな枠で質問し意見を得ることは、情報収集の点で大きな力を発揮する。

 また、複数の意見が並ぶことで、業界や個々の考え方を超えた共通した見方も浮かび上がる。多くのインタビュイーは、日本企業のビジネスに独特な点があると指摘する。ただし、それが障害とする場合もある一方で乗り越えられるとの意見もある。
 日本のコンテンツの独自性、クリエイティビティへの評価は、驚くほど高い。例えばIDWのアダムス氏は日本コンテンツの複雑さ、バラエティの豊かさを、サバン・ブランズのデケル氏は独創性を指摘している。
 日本のライバルとされることが多い韓国のアニメ、マンガについても意外な結果が見える。韓国のビジネスのシステムや積極性が高く評価される一方で、コンテンツとして実際のビジネスは日本コンテンツが多く、また成功していることが窺われるからだ。
 近年、日本コンテンツは、米国市場で苦戦強いられている。しかし、依然高いその評価とコンシュマーのニーズには、多くのビジネスチャンスがありそうだ。

日本貿易振興機構(ジェトロ) /http://www.jetro.go.jp/

我が国のコンテンツの海外における「ゲートキーパー」プロファイリング調査(米国編)(2011年3月)
/http://www.jetro.go.jp/industry/contents/reports/07000627
我が国のコンテンツの海外における「ゲートキーパー」プロファイリング調査(フランス編)(2011年3月)
/http://www.jetro.go.jp/industry/contents/reports/07000626

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