映画評 『劇場版 ブレイク ブレイド 第一章「覚醒ノ刻」』 | アニメ!アニメ!

映画評 『劇場版 ブレイク ブレイド 第一章「覚醒ノ刻」』

映画評 『劇場版 ブレイク ブレイド 第一章「覚醒ノ刻」』文; 藤津亮太(アニメ評論家)

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文; 藤津亮太(アニメ評論家)

 吉永裕ノ介の同名原作のアニメ化。今回公開された第一章「覚醒ノ時」は、全6部作の第一部になる。
 2007年から2009年にかけて公開された『空の境界』のヒットに代表されるように、単館系の劇場でアニメ映画が上映されるケースが増えてきた。その背景にはTVアニメにおける「深夜枠で放送→DVD販売で回収」というビジネスモデルがうまく機能しなくなってきたという事情がある。
 こうした状況を受けてメーカーは、ハイクオリティのものをちゃんとした値段でリリースするという方向を探りつつある。本作もそうした状況の中で生まれた挑戦の一つであろう。そして第一章「覚醒ノ刻」は期待を裏切らない開幕をしたといえる。

 物語の舞台は、化石燃料の存在しないクルゾン大陸。人はもとから備わった“魔力”によって石英に命令を与え、それによりあらゆる機器をコントロールしていた。
 そんな世界にあって主人公ライガットは、魔力をまったく持たない特異体質の持ち主。そのライガットがクリシュナ国王ホズルに召還されるところから物語は始まる。
 ライガットとホズル、そしてその妻のシギュンは士官学校時代からの友人だった。ホズルより、隣国の軍事大国アテネス連邦がクリシュナの領土侵犯を犯したことを知らされるラガット。そして、領土侵犯を行った前線指揮官は3人と友人だったゼスだという。
 魔力を持たず兵器を扱えない、戦闘とは無関係に思われたライガットだが、発掘された古代のアンダー・ゴゥレム「デルフィング」と出会ったことで、友の待つ戦乱の中へと踏み込んでいくことになる。
 本作の見所――というか企画の肝――の一つは、当然ゴゥレムと呼ばれるロボットの戦闘だ。本作では、その機体の性能差をちゃんと目で見える描写として表現しようとし、それに成功している。「速い」というセリフがあれば、その言葉が不要なほどその機体は速いし、「高い」といえばほかの機体と明らかに跳躍力が違う。
 こうした細部の描写を積み重ねて機体性能の差を描いくのはマンガよりもアニメのほうが伝わりやすいし、TVよりは映画のほうが念入りに描写できる。企画の器と内容がしっかり噛み合ってこその映像になっていた。見応えはあるが、今回の戦闘はまだ序盤。おそらく今後はさらに見応えのある戦闘シーンが登場するだろう。

 序盤という点でいうなら、戦闘以上にドラマこそ、原作の1巻を消化してまだ始まったばかり。現在も連載中の原作だけに、全6部で戦乱と4人の友情の物語にどう決着を付けるか。メカ描写にまけないドラマのうねりが生まれることを期待したい。
 また、本作の興行成績(とDVDセールス)が、今後こうした企画が後に続くかどうかの試金石にもなるだろう。熱狂的なファンの存在した『空の境界』と、根強いファンのいるロボット漫画の『ブレイクブレイド』。その「差」がどういうかたちで興行に現れるかについてもまた注目したい。

『劇場版 ブレイク ブレイド 第一章「覚醒ノ刻」』 公式サイト
/http://breakblade.jp/

《animeanime》

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